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2007. 9.20 No.534



『 無責任 』 

 

「無責任」この言葉は「○○さんは、△△に対して無責任だ・・・」というように 皆さんは使っているのはないだろうか。

さあ、この○○と△△に言葉を入れるとしたら、皆さんはどのような言葉を思 い浮かべるだろうか。

海外のメディアは日本に関する記事として、安倍首相の国政に対する無責任な 突然の辞任を大きく取り上げている。

安倍政権は年内もしくは年明けには終焉の時期を迎えるだろうと、海外だけで なく日本国民も思っていたに違いない。でも、今回のように現実逃避的な辞任 となると想定された状況とはかなり違ってくる。

日本の首相が入れ替わりが激しいことなど内外ともに周知の事実であるが、辞 任した人は次なる後継者にしっかりとバトンを渡すまでは首相としての役割を 果たさねばならない。小泉首相の前の森首相だって、自民党の総裁選が終わるまでは日本を代表する人物としてそのポジションを全うしたものである。

それができなかった安倍首相は正直言って「再登板はない!」と言い切れるだろう。 米国バロンズ誌の記事によると、英国の調査会社のエコノミストは、安倍内閣を「金融・財政のポリシーミックスでとんでもない間違いをおかした」と評して
いる。また、現状の日本は、「失われた10年」である90年代に近づいている感があるとも言っている。

国民は代議士先生の「政治ごっこ」にお付き合いするのもたいがいにしたいと思っているはずである。無責任なのは安倍首相だけではなく、安倍首相を辞任に追いやった政治家の体質そのものであるはずだ。

さて、無責任と言えば、最近のIPOも例外ではない。

今朝の日経新聞に、主幹事証券会社の引き受けシェアで野村證券が金額ベースで最大となった、と言う記事があった。

主幹事業務というビジネスをやっている証券会社は「金額×手数料率」で収益が入ってくる。しかしながら、引き受けた新規公開株式はすべからず投資家に販売され、募残が出ない限りそのリスクは限定されている。

そのIPO株はここのところ6銘柄続けて初値が公開価格を割り込んでいる。

その上に初値が付いた後の株価は公募・売り出し株を買った個人投資家の投げ売りで更に株価を下げるという展開になってしまっている。

これでは買い手不在になるのは当然であり、IPOの件数は2000年以降最低の件数になるのも仕方がない。

ここで無責任であると私が考えるのは、主幹事証券会社もさることながら、プレヒアリングで経営者の話を聞いて、仮条件の参考となるブックビルディングのレンジを提示する機関投資家である。

市場参加者の中では一番市場を良く知っていると言われている機関投資家は上場日に買いを入れる存在でもないわけだから中立的な存在といえるかもしれないが、自らが投資をする前提で株価に言及して欲しいものである。

もしくは市場の環境を考えれば、今の環境はIPOには適していない、というコメントをするのがプロの投資家ではないだろうか。

挙句の果てには、上場後に大幅に割安となったところでIPO株を買い漁るというのが今の機関投資家ではないだろうか。

個人投資家が株で損失を被るとその苦情は企業へと向かう。過去なら証券会社の営業マンに向かったのだが、今は個人投資家と企業が直接コミュニケーションする時代になったから主幹事証券会社はポストIPOの株価で煩うこともないだろう。

そこに付け込んだ安易なIPOビジネスが新興株式市場を更に悪化させる原因にもなっている。

その意味において上場後の株価に対して何のアクションも取らない主幹事と、プレヒアに応じた機関投資家はまったく無責任としか言いようがない。 

もし仮に無責任なことをやっていると感じるIPOビジネス関係者がいたらここは少し立ち止まって熟考すべきときに違いない。 

我々国民は株式投資において失われた10年をもう一度繰り返すのは御免被りたいものである。

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東京IPO編集長 西堀敬  column@tokyoipo.com