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2007. 10.15 No.541



『モノ造り企業に注目』 

 

先週の金曜日は京都のメーカーを3社訪問した。

2社は上場企業、1社は現在上場準備中の企業である。

いずれの企業も独自性の高い技術を持っており、日本国内だけでなく海外でもその技術は通用するものである。

帰りの新幹線の中で、日本の中堅メーカーの株価が低く放置されていることは非常にマズイのではないかと思いながら帰京した。

最近のIPO企業を分析するとサービス業、特にインターネット関連のビジネスを営む企業の株価への評価が極めて高く、モノ造り企業への評価があまり高くない。

なぜインターネット関連事業の事業への評価が高いのか?それはたぶんスケールメリットを取りやすいからではないだろうか。

経営資源(人・物・金)を短期間に投入して一気に市場シェアを拡大することができるビジネスだから成長性が高いとの判断があるようだ。

しかしながら日本のインターネットを使ったサービス業は国外に展開することは非常に難しい。

そこには言葉の壁があるからだ。

たとえば、Yahoo!USのサイトは全世界の人々が利用するだろうが、Yahoo!Japanのサイトは日本語を母国語にする人に利用が限定される。

つまり最大でも1億人程度までの利用者しか期待できないわけだ。

ところが株価のバリュエーションでPERが三桁になっているネットビジネス会社が存在するのはかなり疑問を感じてしまう。

ネット関連事業を営む企業は東証マザーズや大証ヘラクレスに上場している企業が多く、地味なモノ造り企業はJASDAQや東証2部に上場しているものが多い。

そのJASDAQは予想利益ベースのPERがつい先日まで15倍台と歴史的な低水準にあった。 一方の東証2部のほうはいまだにPERは15倍台のままで推移している。

投資家が価値を見出せないものは評価が低く、価値を見出せるものは評価が高くなるのは当然のことである。

だが重要なことは、企業の価値は必ずしも株価で決まるものではないということも念頭においておかねばならないということだ。

その代表的なものはM&Aでプレミアムを払ってまでその企業の株式を欲しがる者がいるということである。

わかりやすい例で説明すれば、米シティーグループは日興コーディアル証券の株価が1000円を割り込む可能性があったときに1700円で株式を買い付ける発表をしている。

つまり一般の投資家が評価する価値と事業を営む企業が評価する価値には大きな隔たりが存在するということである。

京都のモノ造りが得意な日本企業を訪問して改めてそれぞれの企業の創造する価値を強く感じたが、必ずしも株式市場はその価値を評価していないのは非常に残念なことである。

特殊な技術を持つ企業の株式市場での価値が低いと言うことは、日興コーディアル証券のように外国企業に買われるような事態がいつ起こってもおかしくないということである。

日本の株式市場は売買代金ベースでは外国人投資家が約60%を占めているが、その主体が機関投資家から事業家に移ることを懸念する日本人はあまり居ない。

今年の日本株のパフォーマンスは世界の中で最も低い水準にあり、株式で資金を運用している人にとってはまったく魅力にない市場になってしまっているかもしれないが、海外の企業で日本の技術を狙っている企業があるとすれば、日本の株安はまたとないチャンスである。

特に中堅規模のメーカーでJASDAQや東証2部に上場している企業の株価はまさにバーゲンセール状態であり、企業経営者は外国人投資家の買いが入って株価が上がったなんて喜んでいる場合ではないかもしれない。

我々個人投資家は特殊な技術をもつ日本の中堅企業にもっと注目すべきで、PERが10倍そこそこで配当利回りが2%なんていう企業がゴロゴロしていることを再認識すべきである。

さもないと大きなリターンを得られると投資機会を失うばかりか、日本の伝統的なモノ造りから生まれる利潤までも外国に流れてしまうことになるやもしれない。

金曜日の夜に京都から帰る新幹線の中での杞憂が現実のものにならないように祈りたい。

 

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東京IPO編集長 西堀敬  column@tokyoipo.com