私が証券界に転職してちょうど6ヶ月が過ぎた1987年10月19日にブラックマンデーが起こった。
その日はNYダウが1日で508ドル、22.6%も下げたのであった。
さすがに前日の2,246.74ドルから1,738.74ドルまで下げると、株式で大損した人が続出して自殺者まで出してしまうような事態にまで発展してしまったのである。
遡ること20年前に起こった出来事だけに、現在の証券界の最前線で仕事をしている人やデイトレーダーと呼ばれる個人投資家は記憶になくて当然のことであるが、当時を知る人々はアノマリー的に10月は嫌な月になってしまっている。
今朝ブログにも書いたが、欧米の株式市場は、3月のチャイナショック、8月のサブプライムショックを乗り越えて年初来高値の水準まで株価指数は上昇してきたわけであるが、このまま年末に向けて強気を振り回す必要はまったくなく、ここはいったん時を稼ぐ局面になっていると考えたほうがいいだろう。
その背景となっている過去を振り返りたい。
まず1950年以降でNYダウの1日当たり下落率のトップ5を見ると
1987年10月19日 −22.6%
1987年10月26日 −8.0%
1997年10月27日 −7.2%
2001年 9月17日 −7.1%
1989年10月13日 −6.9%
となっている。
またよく引き合いに出される1929年のNYダウの大暴落も10月28日に−12.8%、29日に−11.7%の下落している。
このように過去を振り返ると、10月という月は強気になれなくて当然と言えるだろう。
とは言え、1987年と現在では環境が大きく異なるので、同様の暴落が起こる可能性は低いとも言われている。
いくつかの指標を比較してみると
S&P PER 22.7倍 → 18.0倍
FFレート 7.25% → 4.75%
円ドル為替 144円 → 117円
金価格 450ドル → 750ドル
インフレ率 4.3% → 2.1%
1987年→2007年 のようになっている。
金利が低くなっているにもかかわらず、S&PのPERも低いことは、金利と株価益利回りのスプレッドはプラスと正常であり急速な企業業績の悪化が起こらない限り今の株価は妥当性があると言える。
但し、まだ経済指標には現れていないものの、資源の高騰によるインフレが実現のものとなれば金融政策だけでは補完できないような事態も起こりうる可能性もある。
貿易赤字、財政赤字の拡大、イラク、イランの地政学的リスクなどの問題もあって強いドルの維持も難しくなってきている。
理屈上では暴落など起こるような兆しは見受けられないが、いつ何時爆発するかわからない時限爆弾を抱えていることも事実である。
いずれにしても10月という月は資本主義の本家本元である米国の投資家が強気になれないような日柄であることは間違いない。
最後に、先週土曜日の米国バロンズ紙のコラムで「有頂天になっている相場には注意が必要だ。そして現在の相場は−1987年当時のように−有頂天になっている」とダウジョーンズ紙のAndrew Bary氏が注意を喚起していることを紹介しておきたい。