先週の土曜日は京都にてIR会社説明会を開催いたしました。
当日は紅葉の季節で天候も良く絶好の行楽日和となっていました。10時過ぎに京都駅に到着してタクシーに乗ろうとしたのですが、乗り場は長蛇の列でざっと見たところ100名以上の行列となっていました。
やむなく大荷物を引きずりながら地下鉄に乗りましたが、これだけの人出を目の当たりにすると「今日のIR会社説明会の集客は大丈夫かな?」と心配になってしまいました。
会場は12時30分にスタートするのですが10分前になっても人影はまばらで「やはり皆行楽に行ってしまったのかな?それとも西堀の講演で人気薄なのかな?・・・」と思いながら、スタート時刻を迎えました。
過去の説明会ではスタート時刻の30分以上前からお越しいただく方が多い会場だっただけに心配していたのですが、いざスタートしてみるとそこそこの投資家の方にお集まりいただきホッと一息で私の講演を始めさせていただきました。京都での開催もすでに7回目を迎えて投資家の皆さんもそんなに早く行くことはないという学習効果が出てきたようです。
さて、今日は、先週の火曜日と土曜日に講演させていただいた内容について、そのエッセンスを要約させていただきたい。
両日とも演題は「復活する新興市場株〜直近IPOの銘柄を分析する〜」という内容でご案内していたのですが、昨今の状況から日本の新興市場だけ、中でもIPO株だけに特化して話をしていくわけにはいかないだろうと考え、私なりのサブプライム問題の今後の株式市場への影響について語らせていただきました。
サブプライムローンとは何か?についてはすでに語り尽くされていると思うのでいまさら私が解説するまでもないことです。
重要なことは今後の展開です。 それは二つの問題があると考えられます。
- 米国金融機関の問題
- 米国の景気の問題
まず1.について、金融機関は不良債権化したサブプライムローンをどう処理するか?が重要です。
サブプライムローンを自己勘定で一番大きく仕込んでいるのがシティグループです。
そのシティグループは11月5日に東証に上場しました。東証のHPにTの部が886ページ掲載されています。幸いなことにすべて日本語に訳されています。
シティグループは第2、第3四半期に約2兆円近い損失を計上しましたが、この数字はあくまでもシティが自社のバランスシートで抱えているサブプライム関連商品550億ドル(6兆円)の評価損にすぎません。 関係子会社で950億ドル(10.4兆円)保有しているとされています。 これが同じように毀損しているとなるとまだ2〜3兆円超の損失が発生すると見ておいたほうがいいでしょう。
さて、ではシティの財務体力ですが、
シティグループの連結の税引き前利益は
2006年3兆4909億円、
2005年3兆4666億円。
たぶん今回のサブプライム問題で間違いなく1年分くらいの利益は吹き飛ぶでしょう。
一方、株主資本は2006年末で14兆1080億円と体力的にはまだまだ大丈夫な水準に見えますが、上述の通りサブプライム関連商品を16兆円も保有していることから自己資本の毀損にまで及ぶ可能性も否定できません。
ちなみに日本で一番大きな金融機関であるみずほファイナンシャルグループの前期末の株主資本は4.6兆円です。
今回の損失計上でチャールズ・プリンス会長兼CEOは退任し、その後任には元財務長官のルービン氏が就任しました。このことの持つ意味ですが、ウォール街とワシントンの距離は非常に近く、アメリカ資本主義の根幹である金融セクターの体力を回復させるような金融政策が続く可能性が高いということです。
要は金融機関の体力が脆弱であれば救済策の利下げがあるはずだということです。
金融機関が弱いと経済に悪影響を及ぼします。つい数年前の日本のことを思い出してください。
2002年〜2003年の日本の銀行は自己資本の毀損で倒産寸前まで追い込まれていました。本業の貸し出しをすることもできず、貸し渋りを通り過ぎた貸し金を回収するという貸し剥がしをやっていたのです。2003年春先にはみずほファイナンシャルグループは取引先の頭を下げて1兆円増資を行いました。
そのとき日銀は何をやっていましたか? ゼロ金利政策です。銀行を何とかしないと、お金が回らなくなるのです。従って、銀行を助ける、つまり金利を世の中からなくしたのです。
いまの米国も同じではないでしょうか? 本当に金融が疲弊しているなら、FRBは当面金融緩和を続けざるをえません。もし利上げに動いたら、それは金融機関の問題は終わったと見てもいいかもしれません。
二つ目は実体経済の話です。
今回の件で、シティですら自己資本が減るかもしれない状況になっています。
総資産が膨らむような融資活動はしばらくは積極的にできないはずです。BIS基準の自己資本比率を維持するには貸し渋りしかありません。
米国の銀行が一般企業に対しても融資姿勢を厳しくすれば、企業は前向きの投資ができなくなります。そして個人においては住宅ローン審査が厳しくなり、住宅着工件数が低下し、耐久消費財の売れ行きが鈍ることになります。
不動産の含みを担保にしたホームエクイティローンの消費も当然なくなります。サブプライムローン対象者でローン返済が出来なくて住宅そのものを失う人も出てくるでしょう。
これらの現象が景気指標として数字になって現れてくると結構ヤバイ状況になります。
まだまだこのような状況は数値化されて出てきていませんが、それは今ではなくて来年1月中旬以降だろうと見込んでいます。
米国景気の下ブレが具体化してくる時期は、クリスマスの年末商戦が出てくる頃、つまり米国の12月決算企業の数字が出揃うと時期であり、企業の2008年の見通しも出てくる頃に重なります。それと1月下旬には10−12月期のGDPの数値も出てきます。
きっと悪材料が次から次へと出てくるのに耐えられなくて、米国経済はリセッション、株式市場はベア相場に突入というシナリオが描けるのが来年の1月下旬〜2月中旬です。
この状況はシティグループなど大手金融機関の膿だしの終了が見えてくる来年の上半期は続くことを前提に考えておいたほうがいいと思います。
今朝のブログで日本株は割安だと書きましたが、この認識は間違いない事実であります。
しかしながら、日本の株式市場は米国の景気や米国の株式市場の動向に大きく動かされる傾向があります。
それを考えるとだめ押し的な悪材料が噴出してくる年明けは要注意であると考えておくべきです。
その後は、中国でのオリンピック開催なども明るい材料もあった徐々に回復してくると見ています。
年末に向けて日本の株式市場も少しは回復するかもしれませんが、けっして安心して深水に陥らないようにしたほうがいいでしょう。
利益は早めに確定しておく、それに越したことはありません。