「杵柄」(きねづか)とは餅をつくときに使う杵の握る部分のことで、もともとは餅をつく腕前のことを指している。
「昔とった杵柄」とは、昔に習い覚えた技術や技のことで、その技術が長い年月をへだてた今でも発揮されることを意味する。
さて今年もいよいよ確定申告の時期が始まったが、昔とった杵柄で昨年の損失を3年以内に取り戻すことができるのであろうか。
時代が変わるとともにだんだんとその株式投資の手法は変化してきている。
一昔前と言っても1980年代まで遡るが、株式の需給は信用取引の残高を見ていればよかった。その後に、ワラント債や転換社債などが出てきて個別銘柄での裁定取引が始まってきた。
1980年代の後半に入ると、大阪証券取引所が「株先50」なる先物取引を始めて、バスケットで裁定取引が始まる。そしてそのバスケットは日経225、TOPIXへと発展して、先物やオプション取引が市場を大きく動かすようになってきてしまった。
指数に組み入れられてしまうと、いまや個別銘柄のファンダメンタルズ以上に裁定取引で株価が動くことのほうが大きくなってしまったのである。
IPO株についても同じではないだろうか。公募買いの初値売りで大儲けできた時代が去り、いまやセカンダリーマーケットでの値付き状況を見るまでは取り組むべきかどうかも判断が付かない状況になっている。
成功する株式投資手法や投資対象というものはその時代時代によって移り変わるものである。
私が書いた「IPO株の本当の儲け方」は2004年、2005年の株式市場の動向をベースにしたものであって、現在の株式市場にはまったくそぐわないものになってしまっている。
また某氏が書いたバリュー株投資の本もずいぶんと脚光を浴びたが、いつまでたってもバリュー株のままで見直し買いが入らないのが今の株式市場である。
だからと言って、バカ売れした株式投資本に書かれている投資手法が今後永遠に役に立たないかといえばそれは早計であると言えよう。(私の本はバカ売れしていないが・・・)
1−2年前に有効だった手法は再び同じ環境が到来する時まで捨てないで頭の中に封印しておけばいい。
一昔前は株式投資の世界では相場の流れが変わるまで待つしかなかった。それは餅つきの腕前となる杵柄だけで勝負をしていたからではないだろうか。
今や日本人と言えども餅の元になっている米だけが主食ではない。世界中の食材を加工して食べる時代になってきた。
杵もいつかは必要な時代が来るが、いまは杵柄だけに頼る時代ではないことを知ることが重要である。
投資の対象も日本株の現物だけだった時代からデリバティブ、外国株へと広がっているとするならば、その時々によってひとつの方法論に執着することなく杵をフライパンにでも持ち替えて得意な技を磨いて実践すべき時であろう。
さもなくば確定申告でキャリーした損失は取り返せないかもしれない・・・・
(c) 1999-2008 Tokyo IPO. All
rights Reserved.