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3月決算の第3四半期決算発表が先週ピークとなった。同時に今期の業績予想の下方修正が続出している。
あのトヨタですら今期3度目の業績予想の下方修正となった。それだけグローバルな景気の落ち込みが激しく想定外の状況が続いているということだろう。
ここで取り上げたい話題は業績の下方修正が起こることに対する投資家と株式市場の反応である。
トヨタの下方修正発表と株価動向を見ていくと、第1回目の業績の下方修正発表は11月6日。
翌11月7日はさすがに初値が付くまでしばらく時間がかかって結果大幅安となった。
しかしながら2回目の12月22日の下方修正の翌24日はさほど大きく反応しなかった。
そして3度目の下方修正は2月6日となった。1月の自動車販売台数はすでに日米ともに発表が終わっており、12月に引き続き不調であったことから、株価は下方修正をすでに織り込み済みで、むしろ為替が円安に動いたことを好感したようだ。
トヨタは今期3度も業績予想を下方修正して黒字から赤字に転落したにもかかわらず、業績修正を発表した11月上旬以降の株価はさほど大きく反応しなかった。
これはトヨタが自らの業績の変化を発表しなくても、株式市場はある程度業績を予想することができたということではないだろうか。
株価は景気に先行するといわれるが、自動車産業は景気を引っ張る一大産業であるだけに、自動車販売台数の減速は景気そのものの悪化を意味しており、GDPなどの経済指数がでるまでもなく、株価のほうが景気に先駆けて動いたといえる。
その証拠にはトヨタが今期の業績予想を発表した昨年の5月8日の終値は5480円。
そして1回目の下方修正を発表した11月6日までの年初来安値は、2860円とすでに約50%調整していたのである。
また、自動車産業の周辺事業であれば、その川上に位置する部品メーカーや専門商社であっても、川下の組み立て販売を行う企業の動向によってある程度業績の変化を推測することができるはずである。
しかしながら基幹産業に属さない企業の業績動向を投資家が見通すことは難しく、株価は業績予想の修正が発表されるまで動かないことが多い。(もちろんここ半年の株式市場の下げで一般論としてはほとんどの企業の株価は下げ基調であったが・・・)
そして突然の業績悪化が起これば、市場はショックを受けて株価は大きく下落することになる。
過去にも業界そのものが厳しいわけではない中において、大きな業績の下方修正を発表したソニーなどは
ソニーショック
として投資家の記憶にも残っているであろう。
そしてとりわけ株式市場がショックを受けることが多いのが
新興市場企業の業績のブレ
である。
株式市場は、新興市場企業が業績予想を大きく下方修正すると、大きな批難の矛先を向ける習性がある。だからと言って、自動車や電機メーカーの業績の下方修正が正当化されるわけではないが、今回はむしろ非正規社員の契約解除などの労働者の雇用問題に発展して、業績の下方修正はどこかに吹き飛んでしまったようだ。
さてここからは大企業から新興市場企業の業績予想修正の話題に変えて少し考えてみたい。
グローバルに活動する大企業は何度も繰り返される景気の変動への対処方法が出来上がっており、マクロの経済指標を見ていればどの程度まで販売が落ち込み、そして生産を調整しなければならないかがおのずとわかるというものではないだろうか。
ただ今回は、ここ数十年の歴史の中で繰り返された景気変動の幅を逸脱したことで、対処しきれないでいるだけだ。
新興市場企業のIPO企業の中には、IPOして半年も過ぎぬ間に業績を下方修正する企業がある。上場承認時に企業が発表した業績予想すら達成できない新興市場企業への信頼は、その瞬間に奈落の底に落ちてその信用を取り返すにはかなりの時間を要することになる。
では、なぜそのような達成見込みが薄い業績予想を出してしまうのだろうか、との疑問を感じる人が多いはずだ。単純に株価をできるだけ高くすることだけに目的があるとは思えない。ましてやIPO企業ともなると、主幹事証券会社は審査の過程でじっくりと予算と実績の乖離を管理しているはずであり、どうみても実現不可能な業績予想を出せるはずもない。
だとすれば企業も主幹事証券会社も判断不可能な前提条件の中で予算を作っているということしか考えられない。ひとつには、企業そのものの社歴が短くて過去の経験に裏打ちされた予算の実現可能性をしっかりと確認することができないということが言える。そして主幹事証券会社も類似企業が少ない場合は、業界業種の特性がわからないことが業績予想を精査できない理由になっているのではないだろうか。
新興市場企業の業績予想を性善説で考えるならば、そもそも経験値の少ない経営陣が策定した計画であることを十分理解して、株価のバリュエーションを考えながら投資すべきである。
証券会社も、個人投資家が新興市場株を売買する折には、注意を喚起するべきである。
特にネット証券会社においては、注文画面にその旨を表示するなり、ボタンをひとつ多くプッシュさせて確認させるなどの工夫をすべきだと考える。
業績予想と言っても、何十年も社歴のある企業と、設立10年以内の企業ではそもそも業績予想、言葉を換えれば、予算策定の質の深さがまったく異なることを強く認識しておくべきである。
経営企画の担当者が作った予算を取締役会で承認するだけの新興市場企業に対して、ボトムアップで売上・販売・投資の予算を集めるのに1ヵ月以上を費やして会社予算を策定する企業では、経済環境が変化したときの崩れ方は違って当たり前のことである。
もう何年も前のことであるが、IPO直後に業績予想を下方修正した企業の社長が「うちの会社はまだ設立から3年が過ぎたばかり。予算なんて上場するから作ったのが初めてのことで、正直1年先のことはよくわからない。ただ毎日一所懸命仕事するだけ・・・」と言った言葉がずっと頭に残っている。
その時は一瞬無責任な発言と思ったが、景気循環は3年〜5年で上下するものでそのサイクルを一巡もしていない企業に間違いなく実行できる予算の策定を求めるほうがおかしいのではないかと最近思うようになってきた。
とするならば新興市場企業の大風呂敷を広げたビジョンは、経営者自身を鼓舞するためのものだと投資家は割り切っておくべきことが重要である。
しかしながら、時折、そのリスクの高いビジョンが夢を現実にさせてくれることもあるところが、新興市場企業への投資の面白みでもある。
話はとんでもない次元に発展してしまったが、業績予想というものは実現されるほうが難しく、外れて当たり前と考えておいたほうがいい。 なぜなら企業は吹き荒れる景気の風の中を泳ぎながら経営されているからである。
投資家はその景気の風を読んで先回りすることが株式投資の醍醐味ではないだろうか。
投資はすべて自己責任、その言葉を忘れてはいけない。
東京IPO編集長 西堀敬
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