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サブプライム問題、金融危機そして世界的不況と、米国が世界を揺るがせています。かつての景気後退とは明らかに違って、今回の特徴は、リセッションが瞬時に世界に広がり、しかも、各業界の有力企業の損失が巨額なことでしょう。このインパクトは各英文経済紙が「TSUNAMI」と称していますが、今、日本でも多くの一流企業がその大津波に襲われ、のきなみ悲惨な赤字予想が発表されています。
金融、経済、そして政治と、米国は今、大きな変化のうねりの中にあります。よく新聞や雑誌で「百年に一度」とも言われているこの変化について、今後考えていきたいと思います。
世界的激震の震源地の米国としては日々重苦しい雰囲気ですが、週末はプロフットボールの最高イベント「スーパーボール」で盛り上がりました。結果はご存知のとおり、4Q終盤に劇的な逆転劇が繰り広げられ、ピッツバーグ・スティーラーズが27-23でアリゾナ・カージナルスを破りました。
このように、粘り強く回復する力(Resilient Power)は、ゲームの終盤に逆転されてもなお巻き返すというスーパーボールの再逆転劇だけではなく、米国社会の底力なのかも知れません。
ブッシュ前大統領はお別れスピーチの結びで、「回復力があり希望にあふれ、思いやりと強さを持っているというのが我国の強みであることを我々は知った」(we see the best of our country - resilient and hopeful, caring and strong)と語り、米国の強みのひとつは回復力だと言いました。ピッツバーグの町の復活や、逆転劇を制したピッツバーグ・スティーラーズのイエローラインのユニフォームが優勝カップに映えているところを見ていると、そんな米国の回復力を信じられるように思えた日曜の夜のひとときでした。
でも、スーパーボールが終わると、中古車業者が「1台買うと2台目は1ドルで差し上げます」という、ローカルコマーシャルを流していました。資金繰り対策のための悲痛なまでの在庫圧縮策です。
スーパーボールの熱気と興奮も束の間、現実の世界は冷たく厳しいことをあらためて思い知らされました。
先週発表された米国の国内総生産(GDP)は年率換算でマイナス3.8%と、今回の不況はますます深刻さを増しています。在庫の積みあがり効果を除くと、実質的にはマイナス5.1%という落ち込みぶりで、経済は急速に悪化しています。
米国経済の7割を占めている個人消費は3.5%の減少と、前3ヶ月の3.8%の減少に続き、連続で3%以上減少したのは、1947年の統計集計来初めてということらしく、凄惨な状況です。
消費経済の大変な冷え込みぶりが明らかになり、株式市場も下がりました。
米国社会は基本的に回復力を持っているとしても、今後さらに深くなる谷からどのようにして這い上がり、そして、それには果たしてどれほどの時間がかかるのでしょうか?
オバマ大統領は就任演説の冒頭で、「目の前にある試練はまさに深刻な現実でしかも数多い。これは簡単に短期間で解決できるものではない」と、今しばらくは試練の時が続くことを米国民にまず訴えかけました。
なぜ、こんな試練に見舞われたのでしょうか?
「山高ければ、谷深し」と相場の世界では良く言われますが、今、経済は谷間へと落ち続けています。
もちろん、単一の要因でこんな大変な状況になったわけではありません。それを、今後じっくりと考えていきたいと思っていますが、例えば、今回の世界的バブルは、グリーンスパン氏が米国連邦準備制度理事会の議長だった間、特に9・11テロ以降の経済回復期に、長期的に過剰に流動性を供給し続けたことが一つの原因であることは、同氏自らが議会証言で認めています。
2006年、2007年と、溢れにあふれた流動性をもとに、米国では大型の企業買収が続々と行われ、そのための大型買収ファイナンス案件が次々と組成されました。株式市場はこの買収ブームを大いに好感し上がり続けました。住宅と消費ブームも沸きあがり、それにあやかろうとスーパーマーケットにまで臨時のローン受付カウンターがつくられてそこに列ができるほど、個人向けの金融も活況でした。
景気の異常なほどの盛り上がりは米国だけではありませんでした。ご存知のとおり上海やドバイには超高層ビルが次々そびえ、日本の主要都市のほかインドのムンバイにも続々と中高層マンションが立ち上がりました。このように、グローバルに繰り広げられたバブルの宴のあと、今目の前にある試練は、米国だけではなく世界的な試練です。まず米国が回復力を発揮しないことには、世界的に乗り越えていけるものではないでしょう。
グリーンスパン氏は著書『波乱の時代』で、「米国経済には回復力がある(Resilient)と信じてきた」と、ブラックマンデー、ITバブル崩壊、9・11テロショックなどを乗り越えて回復してきた米国経済の底力を大いに信頼していたと述懐しています。
本当に今回も米国は強い回復力を発揮できるのでしょうか、次回以降、米国経済回復までの茨の道程を考えていきたいと思います。
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米国駐在インベストメントバンカー Mayflower
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