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日本のGDPが年率換算でマイナス12.7%と、悲惨な経済状況が明らかになりました。35年ぶりの戦後最悪の状況とのことですが、前回の最悪期は第一次石油ショックだったといわれても、今、ネットを活用して情報収集やトレードをされておられる皆さんは、当時のことをご存知ではない方々がほとんどではないでしょうか?
GDP統計上、日本の方が米国よりも悪い深刻な経済状況だというのは、世界中に戦慄が走った発表でした。日本の新聞は「外需依存の日本経済の岐路」という見出しで評していますが、実感としては、日米GDPの落ち込みの大きな差は「米国需要にテコをきかせていた日本経済が、そのテコがはずれて一気に崩落した」と言うことだと思います。
まさに前回の表題にした「レバレッジの絶叫マシン」の怖さが日本のGDPにも表れているということです。
さて、今回は、このように世界中を恐怖に陥れた元凶のひとつである、ウオールストリートのハイレバレッジ経営について見てみましょう。
前回も書きましたが、ウオールストリートのいわゆる金融メーカー5社は、2008年5月時点で4.1兆ドル、約370兆円もの驚くべき規模の資産を持っていました。
リーマンの場合、総資産は0.64兆ドル(57兆円)もの規模であったのに対して、この資産を支えるための株主資本は、270億ドル(2.4兆円)しかなく、資本の約24倍もの資産を抱えていました。ベアスターンズ(2008年2月)の場合、0.4兆ドル(36兆円)の資産に対して、わずか110億ドル(約1兆円弱)の株主資本と、実に36倍もの総資産を持っていました。
仮に100万円の自己資金があって、それをもとに借りた短期資金で36倍、すなわち3,600万円の株式投資をしていて、この保有株が続落したら・・・・、とても恐ろしくて考えたくもない事態です。
でも、実際、このような事態がウオールストリートで起こりました。ゴールドマンサックス、モルガンスタンレー、そしてメリルリンチと、これら3社はそれぞれ約1兆ドル(約90兆円)の資産を持っていました。同じようなハイレバレッジで。
なぜ、ウオールストリートにこのようなハイレバレッジマシンを装備することが可能になったのか?金融バブルが崩壊してハイレバレッジの絶叫マシンに米国中が震撼した2008年秋の10月3日にNY Times紙は、このようなハイレバレッジが認められるようになった経緯について解明した記事を掲載しました。
これによると、2004年4月28日SECで小委員会が開かれ、ウオールストリートのいわゆる金融メーカー5社には「積み上げる資産規模を株主資本の一定倍率までに規制するNet Capital Ruleを適用しない」ことが決議されたと記しています。財務長官として金融崩壊に対処したPaulson氏は、このルール適用除外が決議された当時は、ゴールドマンのトップでした。
各社が保有資産のリスク量を計測してSECがこれを監督することを前提としてこの決議がなされたにもかかわらずSECは何らの勧告を行なうことなく、以降5社はレバレッジを急上昇させて数年が経過した、と同紙は指摘しています。
また、同記事は、この決議が行なわれた委員会のしめくくりの挨拶として委員長が「このルールが乱用されたときには、恐ろしい事態になるであろう」とコメントしたことを指摘しています。
まさに、そのとおり恐ろしい事態となってしまったわけです。
ウオールストリートの絶叫マシン、それは20〜30倍ものレバレッジで積み上げられた400兆円弱もの金融資産が、奈落の底まで落ちるという、恐怖体験でした。
この恐怖から未だにさめやらぬ世界、「山高ければ谷深し」の相場の言のとおり、混迷はさらに深まりそうです。
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米国駐在インベストメントバンカー Mayflower
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