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2009年3月2日(月)
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NYダウは昨年秋の最安値の抵抗線を破ったあとはあっという間に下げて、もはや7,000ドル割れも目前のレベルになってしまいました。とても買いが入るような雰囲気ではなく、次から次へと出てくる悪いニュースに市場は翻弄されているという状況です。

悪いニュースがまたひとつ。米国のGDPの改定値は、速報値の−3.8%から−6.2%へと大幅に変更となり、在庫投資、純輸出、個人消費などが下方修正されて、経済実態の悪さがあらためて浮き彫りになりました。

また、IMFは世界中の金融機関で2.2兆ドル(約220兆円)もの損失が発生するだろうと推定し、昨秋の発表を大きく変更しました。さすがのIMFの調査能力をもってしても、その変更幅は、1.4兆ドル(約140兆円)と、IMFでさえ予測不可能なスピードと規模で金融混乱が進んでいるとことがわかりました。

この金融危機は「ハイレバレッジの絶叫マシン」のようだといいましたが、今なお進行中の市場崩壊の恐ろしさは、まさに落ちるにまかす「フリーフォール」の状況です。220兆円といえば、日本のGDPの半分がぶっとんだというような規模なのですから。

今回の金融危機で損失が発生するとしてIMFが推計している対象はサブプライム住宅ローンだけではありません。サブプライムよりややましなもの(Alt-A住宅ローンといいます)、通常の信用リスクの住宅ローン(プライム住宅ローン)、商業用不動産ローン、消費者ローン、企業融資、買収関連のレバレッジローン、これらを証券化した金融商品、派生型金融商品、公募債、そしてジャンクボンドなど、あらゆる金融商品にわたっています。これらの多くが、相当の規模で毀損している(やられている)というのです。

なぜ、金融プロがここまでやられたのか?「奴らはがめつさのあまり、やられたのだ」という論調が多くなっています。

金融危機を討議する米国議会の公聴会などで議員がよく叫んでいた指摘、新聞紙上で良く目にするキーワード、それは、「ガメツイ(Greedy)」です。リーマンのトップだったRichard Fuld氏は「年収はいくらだったのか?」という質問責めにあっていました。

New York Times紙による2007年の主要米国企業200社のCEO報酬ランキングでは、リーマンの同氏の年間報酬総額(基本給与、ボーナス、自社株支給の総計)は、約22億円($22Mil)で11位となっています。また、同データによると、2007年当時は約722億円($722Mil)もの価値のリーマン株式を保有していことになっています。

「こんな巨額の報酬をとっていたのは信じられない」と叫ぶ議員に対してFuld氏は「自分の報酬を責められるのは遺憾だ、なぜなら会社はつぶされて価値があった株式を売らずにいた自分は、それを全て失ってしまったのだから」と、なかばこぼしながら答えていました。

前回、ウオールストリートのインベストメントバンクがハイレバレッジを進めたきっかけのひとつは、SECのNet Capital Ruleから事実上うまく逃れることができるようになったことだと書きましたが、金融危機対応に迫られたポールソン元財務長官は、その当時(2004年)はゴールドマンサックスのトップでした。同氏は2006年にその職を辞して財務長官に就いたわけですが、その当時、いくらの報酬を得ていたのかというデータがあります。

Bloomberg Newsによれば、ポールソン氏は2006年当時辞職までの半年間の報酬(給与とボーナス)が約19億円($19MM)、保有自社株式売却で得た収入が約492億円($492MM)、合計で、なんと約511億円もの報酬総額を得ていました。単に、自社株式を保有しているのではなく、売却でキャッシュ化していたのは泣く泣く全て失ったリーマンのトップとは大違いです。

野球のメジャーリーグでは、スタープレーヤーには巨額の報酬が支払われるように、当人としては「なぜ今さらガメツイと言われなきゃならないのか?」ということでしょう。人事報酬委員会など所定の手続きを経た上で決められてきたトップの報酬は当然のもので、今さらとやかく言われても納得できないという心情のようです。

でも、絶叫級の恐怖を感じて金融危機の波を被っている一般人に、特にミドルクラス以下の層にとっては、感情的には受け入れられないものだというのは間違いないでしょう。

インベストメントバンクだけではなく、米国の企業経営トップの報酬体系は今後変わっていくのかどうか、また変わっていくのならどのようなものとなるのか、そしてそれが米国式企業経営の特徴でもある創業家的精神にあふれたバイタリティーをどのように変えていくのか、今後、良く見守る必要はありそうです。

米国駐在インベストメントバンカー Mayflower


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