モニターに目をやると、今日(米国時間19日)も世界の株価指数は全てプラスサインになっています。NYダウも小幅下げで終えました。最近マスコミはこの上げ相場の雰囲気を「グリーンシュート」(芽吹き)と称して、あたかも市場が米国経済の春の訪れを歓迎しているように説明しています。
しかし、住宅ローンを払えない人が増え続けていることが発表され、GMは取引ディーラー約6,000社のうち1,100社を切り捨てることを明らかにするなど、暗い話は相次いでいます。
本当に米国経済回復の動きが芽吹いているのか、それはまだわかりません。グリーンシュートと言ったはいいが回復はまだまだで、あとから「早とちり」だったということにはなるおそれもあります。
今、注目の的は自動車メーカーGMの行く末です。政府から資金支援を得る条件として月末までに抜本的な再建案をまとめることを大統領から求められ、債権者と債務削減交渉を続けています。この交渉が難航を極めており、月内にも連邦破産法11条(日本の民事再生法に相当)の適用を申請する可能性が高まっている、というのがニュースメディアの最近の見方です。先日クライスラーが連邦破産法11条の適用申請をしたことはまだ記憶に新しいところです。
さて、会社が破産申請をすると儲かる人、それは、リストラクチャリングのアドバイザーや破産専門の弁護士です。先日、NYである大型の破綻案件に関わっているバンカーとランチをしましたが、とてもイキイキしていました。世間の景気が良いときにはうかない顔をしていたのですが、まさに「大不況様々」という状況です。
少し前ですが、ブルームバーグニュースに破産案件にまつわる驚くべき記事を見つけました。リーマンの経営破綻に関して銀行や会計事務所、法律事務所に支払うものとして裁判所が認めている費用枠総額は、およそ9億600万ドルだというのです。約900億円もの破産手続費用とは、とてつもなく巨額です。
今回もしGMが連邦破産法11条の適用を申請すれば、銀行や会計事務所、法律事務所に対して総額12億ドル、約1,200億円もの費用が支払われるだろうと、同ニュースは伝えています。
大きな破産案件の前には、こういった各種専門家の動きは俊敏かつ熾烈です。例えが悪くて申し訳ないですが、まさに死肉に群がるハイエナのごとく、破産企業やその取引金融機関を夜討ち朝駆けで追いかけ、受注に向けて懸命に動きます。破産企業から依頼を受けられなかった場合には、それに対峙する金融機関等債権者からの依頼取り付けに切り替えて攻め込みます。
破産企業からの依頼を獲得した場合には再建に向けてできるだけ多くの負債カットをめざし、反対に取引銀行団から依頼された場合にはより多くの回収を求め、激烈な交渉を日夜つとめて巨額の報酬を手にします。私も不幸なことに彼らの専門的助言を頼りにする場合が最近増えているのですが、確かに彼らは猛烈に働きます。先日私が昼食を一緒にしたさきほどのバンカーとは昨年秋に某破産案件で関わったのですが、破産が申請された日の夜中にはシカゴで話をしていたのに、翌朝にはビジネスジェットでニューヨークの破産企業のオフィスに着いていました。
世の中に破産風が吹けば破産関連の専門家が儲かる。残念ながらこの風は当分吹き続きそうです。
|