月曜日がメモリアルデー(戦没者記念日)で休日だったため、今週の米国市場は3連休明けのスタートとなりました。火曜日朝発表された5月の消費者信頼感指数は昨年9月以来の最高値を示したためこれを好感してNYダウは200ポイント近くも上げて週初日の取引を終えました。
市場のあいまにブルームバーグニュースを見ていると、メモリアルデーの新作映画の興行結果が発表され、20世紀フォックスの「ナイトミュージアム2」が、7,000万ドル(約66億円)を売り上げトップの興行成績だったと伝えていました。この休みに私の息子も見に行っていましたが、ミュージアムの展示物が夜動き出してひと騒動起こすというたわいもないコミカルなストーリーには、お笑いで束の間でも厳しい現実を忘れさせてくれる魅力があるのかもしれません。
1996年、活況な資産価格上昇をグリーンスパン前連邦準備制度理事会議長が「不合理な熱狂」と評したことがありますが、今の上昇相場は同氏ならどのようにコメントするのでしょうか?
また、ケースシラー住宅価格指数(戸建て住宅の販売価格推移を表す指数のこと)も発表されましたが、3月の全米20都市の指数は全年同月比でマイナス18.7%と、引き続いて大きな下落傾向を示しました。
良い材料と悪い材料がともに明らかになりながらも、マーケットは少しでも良い材料を好感した週初日の取引でした。
先週貯めていたニュースを飛ばし読みしてみると、リーマン破綻時のトップでその後も同社会長として残り、資産処分と債務弁済を進めてきたファルド氏が、その整理にほぼメドがついたとして会長を辞任したことが報じられていました。
この一連の金融危機のピークはいわゆるリーマンショックから始まったことを思えば、そのトップ退任は、時間軸的に危機がほぼ一段落した表れなのかも知れません。
でも、多くの米人と話し、新聞などで米国各地の事情を伝える記事を読みながら思うこと、それは、「さらに深まる疲弊感」です。
約半世紀もの間クライスラーやGMの車を売り続け最近の苦境に資金を注ぎ続けたあげく切り捨てられる約2,000軒以上ものディーラーでレイオフされる営業人員や自動車修理工。彼らの多くは失業者手当申請の列に並ぶしかなく、子供の学費見直し、ハムをはさんだだけの手製サンドのランチと、既に生活をきりつめてきたのに、彼らにはさらに厳しい現実が迫っています。
赤字に苦しむ航空会社も合理化を強化、パイロットは低賃金で過酷な労働を強いられており、もはや安全運航が確保できるのかどうか疑問だとニューヨークタイムズ紙は指摘しています。パイロットも機内の食事は有料化、それを切り詰めようと操縦室に手製のサンドイッチを持ち込むという涙ぐましいかぎりの現実で、航空業界の華麗なイメージはそこにはありません。
蟹工船とはいわないまでも、あらゆるところで疲弊感深まる現実の生活。市場の熱狂が「合理的な熱狂」として現実経済をリードして、本格的な経済回復軌道に乗るのはいつか?その日が早く来ないと、早晩「不合理な熱狂」から覚めた時、市場の反動は大きいのではないでしょうか。
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