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2009年6月3日(水)
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みなさんご存知のとおり、米自動車業界の最大手企業ゼネラル・モーターズ(GM)が1日、連邦破産法11条(日本の民事再生法に相当)の適用を申請しました。約16兆4,000億円もの負債を抱え米国のメーカーとして最大の倒産となりましたが、米国政府が約2兆9,000億円もの追加融資を行ない実質国有化して再建を進めることをオバマ大統領が発表しました。また、機を一にして、先に破綻したクライスラー破産の法的手続きがほぼ完了したことも明らかにし、政府主導でスピード再生を進めていることを印象付けました。

マーケットはこのニュースに嫌気することなく前向きに反応し、上げ相場(ラリー)は勢いを失う気配はありません。「不合理な熱狂か」と前回書きましたが、まるで不合理なこともそれが続けばいつのまにか合理的になるとの思惑があるかのようにラリーは続いており、今後一進一退しながらもフォローすべきトレンドとなる可能性はあるのかもしれません。

さて、このGM騒動の中小さなニュースがありました。1912年4月14日、北大西洋のカナダ沖で氷山と衝突し、翌早朝に沈没したタイタニック号の事故から生還し現在まで生きた最後の生存者である97歳女性のディーンさんがイギリスのサザンプトン(タイタニック号の出航地)で亡くなったという記事です。当時9週間の赤ん坊だったディーンさんは、家族で米国のカンザスに移住するためにタイタニック号に乗って事故に遭い、2歳の兄と母親と数少ない救命ボートで救助されたものの、父は船と運命を共にしたとニューヨークタイムズは伝えています。

豪華客船が沈んだ時代に産声を上げた会社それがGMです。GMの社史ホームページを見ると会社創立後の経過時間を「100年258日13時間50分45秒」と倒産を機に止めることもなく刻々と表示し、オバマ大統領がGMの法的処理を発表していた間にもこの時間を刻んでいました。

タイタニック号が無事ニューヨークに着きディーンさんの家族が成功していたならその暁に手に入れたかった当時の車のブランド、それは、ビューイック、オールズモビル、キャデラックそしてシボレーというGMブランドだったはずです。

これらの車種を今も擁しているGM。それはブランド価値として評価すべきものでしょうが、もはや海底で朽ち果てているタイタニック号のように遺物的価値しかないのかもしれません。事実、1998年頃からGMは乗用車よりも多くのトラックを生産し販売車種構成も変わって2000年代以降その傾向はより顕著になっていました。

氷山と衝突後に3時間ももたずに海中に消えたタイタニック号、かたやスローモーションのように100年後に力尽きた巨艦GM。十分な救命艇がなく約7割の乗員乗客が犠牲になったタイタニック号と、政府救済策が用意され7割が救済される(日本の新聞の見出しも「3割縮小」でした)GM。100年を経たこの両事件の対象の妙には不思議かつ考えさせられるものがあります。

「GMにとって良いことはアメリカに良いことだ」とかつては語られたほどGMは米国の中産階級社会の質的向上のシンボルでした。そのシンボルが地に落ちた今、米国のミドルクラスがどのように生きていくのか、冷たい海のような経済社会を漂いながら命運が潰えてしまうのか。政府と共に新生GMの大株主になる労働組合だけでなく、GM再生の正否には米国社会の行く末がかかっていると言っても過言ではありません。政府資金をつぎ込み再生案を発表するまでは簡単でも、これから先の実行はオバマ政権にとって試練いっぱいの茨の道になるのではないでしょうか。



米国駐在インベストメントバンカー Mayflower


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