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2009年6月17日(水)
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今週はじめ米国医師会の会合でのオバマ大統領演説をテレビで見ました。通常は米国の単なる一社会的テーマとして聞き流すだけですが、今回は半ば我が事として聞いてしまいました。

実は最近、私の息子がスケートで遊んでいて転倒、激しく頭を打って帰って来ました。安静に寝かせていましたが気分が悪いと訴えたため、夜中に私が救急病院まで連れて行きました。そこで、CTスキャンなどの検査を受けたところ、小さな頭内出血があることが判明、その病院から救急車で脳神経外科医がいる大きな病院に転院し緊急入院しました。

幸い一晩で自宅安静することが認められ、その後おかげさまで完治して元気になりました。

驚いたのは病院からの請求書を見た時です。2つの病院での検査費用、転院のための高度医療装置付きの救急車利用費用の総額はなんと約120万円、一晩の検査と観察入院費用がこんなにもかかってしまったのです。

米系のある医療保険に加入していますので最終的な自己負担は20万円ほどになりそうですが、正直、予想していなかった金額でした。最初駆け込んだ救急病院では、CTスキャン、血液検査、体重測定で約50万円請求されましたが、保険会社の監査では適切な請求とのことでした。

保険制度が徹底している日本とは違い、個人または会社で保険に加入していない限り米国ではこのような医療費は全て自己負担で(65歳以上の老齢保険加入者は除く)、医療保険等に加入していない無保険者は、米国の全人口の約15%(約46百万人)もいると見られています。

今後米国の失業率は当面上昇し続け、無保険者は増えていくことは間違いありません。

人道上の措置として医療機関は急患への治療対応を当然行ないます。テレビドラマでも有名なシーンとなった緊急治療室(ER)に息も絶え絶えで運び込まれる患者に保険加入の有無を確認しようもありませんから。でも、患者が無保険なため支払われない費用は、連邦、州政府が補填するか、補填されない分は医療コストに転嫁し広く一般の患者負担とするため、医療費は全体的に高くなってしまいます。

今般の米国自動車メーカー破綻の背景にも、年金や医療保険債務問題があります。GMなど米国の自動車会社は過去、組合と労働協約を更新する毎に、現役社員だけではなく退職者の医療保険費用負担を合意していました。しかし、退職者の平均寿命が延び医療保険コストは雪だるま式に増えて、本来は研究開発などに振り向けるべきキャッシュが医療保険負担に消え、企業競争力は長きにわたり低下し続けました。

オバマ大統領は医療コストの効果的な削減を実現させたいと演説で確約していましたが、医療関連業界の様々な利害を乗り越えてこれを実現していくのは相当大変なことでしょう。しかし、今や医療費削減に取り組まずに経済問題の解決は不可能だといえます。

幸い大事に至らずこの程度の費用で済んだことを私は感謝すべきかも知れませんが、今回、自分の懐に衝撃を感じて初めて米国の医療費問題を実感しました。オバマ政権の今後の対応に注目して行きたいと思います。



米国駐在インベストメントバンカー Mayflower


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