さて、問題は年明け後の動きだ。
先に述べたとおり、12月は季節要因としてリパトリエーションに絡むドル回帰の動きが出やすいが、年明けは逆にドルがユーロや英ポンドなどに対して売られやすくなる可能性がある。それでも、オバマ新大統領がメディアで予想されているように「5千億ドルから7千億ドルに及ぶ大規模な経済対策」を実施する運びになるとすれば、しばらくは「強いドル」を標榜せざるを得ず、そう簡単にドル売り圧力が高まることはないのかもしれない。
しかし、もう少し長いスパンで考えれば、やはりドル不安の高まりを認めざるを得ない要素というのは少なくない。
まず気になるのは、いまオバマ氏に対する世界的な(無論、米国内においても)期待があまりにも高まり過ぎている(バブル化している)という点である。どんなに期待を背負った政権でも、よく「その期待が継続するのは、せいぜい100日間」と言われる。期待が大きければ大きいほど、それだけ失望も大きくなる可能性は十分にある。
また、いま足元で行われているドルの大量供給が、いずれドルに刃を向けることも考えておかねばならない。各国の中央銀行を通じて世界に供給されたドルは、足元の金融危機を収束させることに貢献するが、結果、金融危機が収束したあかつきには各国に供給されたドルが吐き出され、市場にドルが溢れる可能性を考慮しなければならない。
わかりやすく言えば、世界的な金融・経済の混乱が収まらないうちはドルも売られにくいが、その混乱が収まると、逆にドルは売られやすくなるということも念頭においておかねばならないということなのである。
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