ここにきてユーロが強含みとなっているのは、一つにECBの追加利下げ余地が限られてきていることが挙げられる。
周知のとおり、12月4日にECBは0.75%利下げして政策金利は2.50%となった。その後、ECB政策委員会メンバーであるルクセンブルク中央銀行のメルシュ総裁は、ECBによる「異例」の利下げが現下の金融危機のなかで景気支援になると述べたうえで、追加利下げの余地は限定的であるとの見方を示した。
かいつまんで言えば、あと0.5%程度に限られるものと思われる利下げ余地は、不測の「何か(?)」が世界の「どこか(?)」で飛び出したときのために「いまは大事にとっておこう」ということだろう。
もちろん、件の米自動車大手(ビッグ・スリー)の問題が、いまだくすぶり続けていることも、ユーロが強含みとなっている要因の一つと言っていい。
周知のとおり、ビッグ・スリーの救済を巡る協議は、二転三転の末、米政府が金融安定化法の活用を軸に検討する見通しとなった。これで目先の経営破たんと、それを巡る経済実体への悪影響はとりあえず回避されたが、これまでポールソン財務長官が指摘していた通り「自動車大手を救済すれば他の企業からの救済要請を拒めない」というのも事実であり、今後、なし崩し的に金融安定化法の公的資金活用が拡大する恐れがあることも事実だ。
もともとの「金融システム安定化のため」に使うだけでも、総額7000億ドルの枠では不足することとなる可能性が高い。いずれ「その事実」は一層鮮明となり、ますます米政府の財政負担が膨らむ可能性が案じられ、当面、ドル不安はくすぶり続けることとなろう。
さらに、本稿執筆時点では明らかでないが、12月16日に発表される米政策金利が過去50年間で一度しかない1.0%未満の水準となることは間違いない。まして、市場コンセンサスと思われる0.5%の利下げであれば市場の反応も限られるだろうが、もし0.75%のサプライズとなれば物理的に日米金利は逆転するわけで、その反応は予測不能である。
12月12日に、一時88円近くまで下押したドル/円は、その後なんとか90円台まで戻すこととなったが…。今後、仮に80円台で定着するような動きを見せるようなら、日銀による単独介入の可能性も否定できなくなってくる。
いまごろになって、ようやく中川財務相は市場介入も視野に入れる姿勢を滲ませはじめている。また、日銀内部では一部の政策委員が追加利下げの可能性を検討し始めていると言う。
政策対応が後手に回れば、一段の円高・ドル安に歯止めがかからなくなる可能性がある。その一方で、何らかの政策対応がなされれば、一時的にもドル/円が急騰する可能性もあり、これでは誰もドル/円に手出しすることはできない。
あえて何らかのポジションを持つとすれば、そろそろ三角保ち合いが煮詰まりつつあるユーロ/円に注目し、明確にレジスタンスを上放れたら「買い」、サポートを下抜けたら「売り」ということになろうか。なお、買いの場合は11月25日高値=126.20円、売りの場合は10月27日安値=113.58円がターゲットとなる。
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