振り返れば、米FRBのバーナンキ議長は3月15日放送のCBSテレビのインタビューで「来年から景気回復が始まるだろう」としつつも「最大のリスクは(金融安定化に向けた)政治的意志がない場合」と指摘していた。
先に述べたように、米FRBは資産の膨張を伴う国債の買い入れを強い政治的意志によって決定。次いで、3月23日にガイトナー財務長官から打ち出された不良資産買い取り策=官民投資プログラムは実現性の高い内容であるとして市場の評価を得た。米政府ならびに金融当局は(当たり前の話だが…)かなり本気だ!
本気の対応が打ち出されれば、その度に市場はそれを好感し、一時的にもドル買いが進められるだろう。もちろん、逆に市場の期待を裏切るような内容なら、一時的にもドルは売り叩かれる…。
3月30日に米政府はGMとクライスラーが提出した再建計画を「不十分」と切り捨て、場合によっては破産法適用も視野に入れる考えを滲ませた。結果、ドルは売り込まれドル/円は一時的にも96円を割り込む水準に値を沈めた。しかし、今回の米政府による厳しい対応は、多分に米国民の感情・世論に配慮したものと考えられ、今後も若干のリスクはあるものの、基本的にはオバマ大統領が主張する「自動車産業が消滅するのを放置しない」という方向性で解決を図るものと見られる。
つまり、いましばらくドル/円の戻り歩調は続く…。
名実ともに新年度入りした外国為替市場では、前期末まで散見された本邦輸出企業のリパトリに伴う円買いや機関投資家による期末の円買い戻しといった動きは見られなくなった。また、シカゴ・マーカンタイル取引所(CME)における円先物の大口投機家のポジションを見ても、3月10日発表分までは一万8000枚を超える買い越しであったものが、17日発表分で売り越しに転じ、24日発表分では一段と売り越しが拡大している。
円売り圧力は依然として萎えることなく、下のチャートに見るようにドル/円は相変わらず200日移動平均線を抵抗としながらも、基本的には底堅い展開を続けている。89日線、21日線ともに横ばいから上向きの状態が続いており、今後も「調整安の下値は買い」のスタンスで臨むべきであろう。個人的には、遅くとも5月後半から6月にかけて102円前後の節目(詳しくは前々回の本欄を参照のこと)を試す展開になるものと見る。
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