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このところ、原油先物価格が目立って上昇してきており、連れて金先物価格も強含みで推移している。

WTI原油先物(7月限)の5月29日時点におけるNY終値は、1バレル=66ドル台と昨年12月安値=32.40ドルに対して約2倍という水準。少々過熱感がでてきてもおかしくないところだ。もともと、WTI原油先物価格は昨年12月〜今年2月にかけてトリプルボトムを形成しており、そのネックラインを50ドル前後とすると「当面は65〜68ドルあたりまでの戻りがあり得る」ということも想定されていた(下チャート参照)。その意味では、そろそろ「達成感」が出てきそうな水準と言えよう。

仮に、もう一段の上値を試すとすれば、昨年高値・安値の38.2%戻し=76ドル台までの戻りはあるかもしれない。


周知の通り、このところの原油先物価格上昇の背景にあるのは、金融市場安定化と米景気の底入れ&先行き回復期待などということになろうが、これは少々「先走り」しすぎであろう。

5月26日に発表されたS&P/ケースシラー住宅価格指数(U.S.National)を見ると、06年第2四半期のピーク時に対して32.2%の下落となっており、底値のメドとされる「ピーク時比39%下落」という水準に近づいてきたことがわかる。よって、そう遠くない将来、米住宅価格が底打ちする可能性は高まってきているわけだが…いまだ底打ちが確認されたわけではなく、現実に目の前ではなおも下落し続けている。

既に打ち出されている金融安定化策や景気刺激策についても、その効果が目に見えて現れるまでには少なくとも数か月の月日を要することとなり、現在はその効果を見極めるまでの「待ち」の状態と言える。現に、米国のガソリン平均需要はなおも前年を下回ったままの状態が続いており、今後も弱含みの状態が続くと見る向きが少なくない。

そうしたことなども考え合わせると、今後、原油先物価格は一時的にも調整場面を迎える可能性が否定できない。同時に、原油先物価格に連れ高してきた金先物価格についても、1オンス=1000ドルの大台を前に、そろそろ足踏みしそうなムードが高まってきていると言えよう。中長期的に原油や金の先物価格が上昇トレンドを辿る可能性が高いことは否定しないが、目先のこととなると少々話は違ってくる。

そもそも、このところの原油&金先物価格の上昇はドル安に拠るところが大きいわけだが、このドル安は多分に投機筋の仕掛け的なドル売りの結果と見られる。たしかに、このところ足下には米財政赤字拡大とそれに伴う米国債の需給悪化懸念、米長期金利上昇などといった売り材料も数あるが、よく考えれば、いずれも「蒸し返し」の材料であり、多分に「後付け」という感が否めない。つまり、投機的な売りを正当化する数々の「口実」がさもありなんと並べられているのである。



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