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中国の金融引き締めは、いまのところ預金準備率の引き上げや一部の銀行に対する融資規制など、お得意の「窓口(個別)指導」に終始しており、今後しばらくはそうした「指導」の効果を見極める必要があることから、そう矢継ぎ早に追加策が打ち出されるわけでもなかろう。
その意味では、このところの市場の反応は少々先走りすぎであり、過剰反応と言えなくもないのだが…。
ただ、足下で中国の消費者物価指数や対外輸出が前年比でプラスに転じ、年明けから銀行融資の伸びが再び加速し始めている状況を考えると、そう遠くない将来の金融引き締め=金利引き上げに向けて、すでにカウントダウンが始まっているであろうことも否めない。
実際に、中国が金利を引き上げれば、それはそれなりのショックを市場に与えるはずである。こればかりは、事前に市場が織り込んで、実際に金利引き上げが実施されたときにはアク抜けとなる…というわけにも行かないことであろう。それまでにも市場はジワリと織り込むだろうが、実施後もしばらくは「ショック状態」が続くものと見られ、それが世界経済に2番底を試させる大きなきっかけの一つとなる可能性は拭えない。
一方、米国では「件の金融規制案がヘタをすると景気を腰折れさせる」ことを危惧する向きがある。しかし、これから法案を作成し、それを議会で審議し、最終的に法律化して行くまでには相当に時間を要することが予想され、いずれ時の経過とともに消化されてゆくこととなるのではないか。
確かに、いずれは何らかの金融規制が必要となることであろう。ただ、今の段階においては「やけに唐突で拙速」と感じられることからして、これは多分に中間選挙対策の人気取りといった色合いが強い。このところ分が悪いサマーズを事実上外し、代わりにボルカーを引っ張り出したのも同じ理由であろう。
むしろ、大いに気がかりなのは、リーマン・ショック後の危機対応のために講じられた諸々の異例な資金供給策などを、この2月から米政府・当局が段階的に終了させるとしていることである。
29日に発表された米国の09年10―12月期GDP成長率(速報値)は前四半期比で実質年率5.7%のプラスであった。事前の市場予想を大きく上回る結果となったが、これは諸々の政策効果が大きく出たものであることは否めない。よって、政策の「カンフル剤」が段階的に打ち切られた後には、一時的にも大きく落ち込むことが危惧される。これも、世界経済に2番底を試させる大きなきっかけの一つとなる可能性がある。
総じて、年前半は市場にリスク回避ムードが広がりやすく、ドルストレートでのドル買いも進みやすくなるものと思われる。その結果、原油先物価格やその他の国際商品価格には下押し圧力がかかりやすく、そのぶん資源国の通貨や株価指数なども下押ししよう。一方で、ドルは対円でも買い進まれやすくなるものと見られ、ドル/円は緩やかに上値余地を拡大させることとなるのではないか。
1月27日には一時的にも89.15円まで値を沈めたが、同水準は昨年11月安値から今年1月(8日)高値までの上げに対する「半値押し」に近い。同時に、一目均衡表(日足)の「雲」上限の水準にも到達したことから、ここは当面の下値の限度として意識されやすいものと思われる。
今後、あらためて200日線を明確に上抜けると、ドル/円の調整は一旦終了となり、まずは1月8日の高値水準である93円台後半を目指すものと見られる。もちろん、その過程においては昨年4月高値以降に形成されてきた下降チャネルの上限をブレイクすることとなり、晴れて新たな上昇トレンド入りということになる。ここで明らかなトレンド転換が確認された場合には、前回の本欄で述べたとおり、最終的に昨年4月高値=101.45円を試すこととなろう。
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1964年東京都生まれ。 慶応義塾大学卒業後、現三菱UFJ証券勤務を経て転身。主に金融・経済全般から戦略的な企業経営、引いては個人の資産形成、資金運用まで幅広い範囲を分析・研究する。民間企業や金融機関、新聞社、自治体、各種商工団体等の主催する講演会、セミナー、研修等の講師を務め、年間の講演回数はおよそ150回前後。 週刊現代「ネットトレードの掟」、イグザミナ「マネーマエストロ養成講座」など、活字メディアの連載執筆、コメント掲載多数。また、数多のWEBサイトで株式、外国為替等のコラム執筆を担当し、株式・外為ストラテジストとしても高い評価を得ている。 |
自由国民社「現代用語の基礎知識」のホームエコノミー欄も執筆担当。 テレビ(テレビ朝日「やじうまプラス」、BS朝日「サンデーオンライン」)やラジオ(毎日放送「鋭ちゃんのあさいちラジオ」)などのレギュラー出演を経て、現在は日経CNBC「マーケットラップ」のレギュラーコメンテータ、フジテレビ「めざましテレビ」、「ほんまでっかニュース」の経済ご意見番などを務める。 |
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