今月(7月)、世界の金融界を揺るがすような大きな事件が立て続けに起こりました。
■米当局の思惑が見える捜査
まず7月2日に英国大手銀行バークレイズが、世界の金利の指標になるLiborを不正操作していたとして米英当局から360億円もの罰金をかけられ、ボブ・ダイヤモンドCEOら首脳3人が辞任に追い込まれました。
世界の他の大手銀行にも同様の疑惑が向けられているだけでなく、英国や米国の金融当局が関与していた可能性まで出てきており、ますます問題が大きくなりそうです。
一方、同16日には、これまた英国の最大手銀行HSBCが、マネーロンダリングに対して適切な防止策を取っていなかったとの報告書が、米国上院の委員会から出てきました。
これも巨額の罰金の対象になりそうで、世界の他の銀行へも広がりそうです。すでに日本の北陸銀行の名前も出ています。
たまたま同時期に重なったのですが、背景を良く考えると米国当局の思惑が透けて見えてきます。まず、どちらも英国の大手金融機関を米国当局が「捜査」していることです。
■どちらも昔の話
Liborについては主にドルの金利が不正に操作されており、ドルは米国に通貨主権があるため米国当局が英国当局の協力を得て「捜査」したのですが、360億円の罰金の大半は米国当局に支払われました。
マネーロンダリングの方は、米国が金融制裁対象とする北朝鮮やロシアマフィアの不正資金を取り扱ったからで、これも米国当局が英国当局の協力を得て「捜査」することになるのですが、1000億円とも言われる罰金の大半は米国当局に支払われることになりそうです。
さらに、Libor不正操作は2005〜2008年頃の話で、マネーロンダリングも2005〜2007年頃の話のようで、両方とも「なんで今頃になって?」というタイミングなのです。
まずこれらは、世界の金融市場における影響力・発言力を高めたい米国の思惑が現れています。じゃあ、どこに対して影響力・発言力を高めたいのかと言いますと、それは米国の政治・経済にとって唯一の強敵である「ユーロ圏」に対してです。
■まずは英国攻撃へ
しかし、英国はEUには加盟していますが「ユーロ圏」ではありません。だから英国の銀行から攻撃したのです。つまり「ユーロ圏」に対して「米国(ドル)圏」の地位が低下しないように、英国が完全に「ユーロ圏」に入ることを阻止しようとしているのです。
英国は、ユーロドルの中心地であるロンドン(シティー)を抱えており、「ユーロ圏」が目指す銀行同盟にも簡単に賛成できないはずです。だから余計に米国は英国に対する影響力・発言力を強化したいのです。
日本の銀行へはどうするのでしょう? 日本政府が、先日の600億ドルもの資金提供で「ユーロ圏」に過剰に協力したり、人民元の直接取引や中国国債の購入など「人民元の国際化」に過剰に協力したりしていると、「ちょっと日本の銀行も攻撃してやれ」と言うことになってしまうのです。
それでは米国当局は、同じようにLibor算出に関わっている米国大手銀行(具体的にはJPモルガン、シティ、バンカメ)には全く不正の疑いが無く、マネーロンダリングにも数多くある米国銀行が関与していないと考えているのでしょうか?
全く違います。
■実は対抗ロムニー候補への攻撃?
少し前に発覚したJPモルガンの巨額損失事件も含めて、米国当局にとって米国金融機関を攻撃するポイントは山ほどあり、決して見逃すつもりはないはずです。ただタイミングを見計らっているのです。
米国では(特に大手の)金融機関に対する規制強化は、今秋の大統領選挙の重要なテーマとなります。オバマ大統領は規制賛成派であり、共和党のロムニー候補は規制反対派です。もちろん米国金融界も規制には反対です。
つまり再選を狙うオバマ陣営とすれば「タイミングを選んで(特に大手の)金融機関を攻撃し、規制強化を推し進めて選挙を有利に進めたい」のです。
少なくとも規制反対派のロムニー候補に打撃を与えることができ、また「経済低迷」に対する責任追及をかわすことが出来るからです。
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