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その時、投資銀行部の入口のドアが音を立てて開くと、ぽつんとしたライトの明かりが部屋の中を右に左に獲物を狙うサーチ・ライトのように動きはじめた。ビルの警備員の巡回であった。由右子は咄嗟にパソコンのモニターの電源を切ると机の下に潜り込んだ。学は市田のデスクの後ろで腹ばいになって床に伏せた。慎介は市田の部屋のすぐ横にある川辺真樹のデスクの下に潜りこんだ。警備員は部屋の奥まで入ってくると懐中電灯で部屋の隅々を照らして部屋の中を回り始めた。慎介は心臓の鼓動が早くなるのを感じ、その音が警備員の耳に届くのではないかとさえ思った。警備員の足音がだんだんと慎介が隠れる川辺真樹のデスクに近づいて来た。やばい、このままでは見つかってしまう。そうなればすべての計画も水の泡だ。慎介が無意識のうちに握り締めた掌からは冷や汗が溢れていた。警備員の足音が川辺真樹のデスクの前でピタリと止まった。慎介の目の前には警備員の靴がはっきりと見えていた。その時、オフィスの入口のドアが再び開いて男の声がした。
「そっちはどうだ。終わったか?」
「ああ、こっちも問題なさそうだ。今行くよ」そう言うと警備員は出口の方に歩いていった。慎介は極度の緊張から解き放たれた。緊張からか慎介の額からは滝の様に汗が流れていた。学も由右子も危険が去ったのを確認して姿を現した。
「どうなるかと思ったよ。なんとか切り抜けたみたいだな」
「はやいとこ、退散しよう」
「ちょっと待って。その前にもうひとつやることがある」学はそう言うと市田の席に座って、モニターのスイッチを入れた。Eメールの画面を立ち上げると、送信済みのフォルダーに入って、先ほどプライベート・バンクの専用画面から送信したメールを完全削除した。
「よし、これでOKだ」学はパソコンの電源を切ろうとした。その時、新しいメールの到着を告げる電子音が響いた。学は電子メールの受領済メールのホルダーを開いてみた。チューリッヒのプライベート・バンクの担当者からのメールであった。学は迷わずにそのメールを開封した。

【G57582633FSN様宛、本日、頂きました代理人による送金指示の件ですが、確かに承りました。今日現在の口座の残高を確認いたしましたが、ご依頼の送金金額20億円相当の資金は口座にはございません。送金実行日まで、該当する金額の資金が確認されない場合は、同送金指示は実行されません。本件、ご確認の上、ご連絡下さいますようお願い申しあげます】
 
「チューリッヒのプライベート・バンクから早速返信が来ている。気づいてよかったよ」学はそう言うと返信のメールを書いた。
 
【本件に関しましては、8月5日の同日に、資金が日本から振り込まれます。同日付け替え送金にて本件の手配をお願いします。尚、本メールに対する返信は不要です。しばらく海外主張に出ますので、緊急の連絡等がある場合はユナイテッド・リバティー・プライベート・バンクの東京までご連絡ください】
 
学はそのままメールを送信すると、受信メール・ホルダーから先般のチューリッヒからのメールと送信メール・ホルダーからたったいま送信したばかりのメールを選んで、完全削除した。学は2人の方を見て行った。
「これですべては完了だ。あとは8月5日を待つだけだな」そう言うと学は市田から失敬してきたカード・キーをハンカチで念入りにふいて指紋を拭き取り、デスクの上に投げ捨てた。その後、3人は周りを警戒しながら投資銀行部の部屋を後にした。
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