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その日のお昼過ぎには、新聞各社は号外を出した。様々なヘッド・ラインが紙面の上を踊った。
【山川証券、自主廃業へ、簿外債務3千億円が引き金】
【山川証券、自主再建断念、負債総額3兆円規模、日銀特融?】
【山川証券、自主廃業決定、大蔵省は市場の判断を支持】
【山川証券、自主廃業へ、日銀の特融で顧客資産を完全保護】

午後4時からの緊急記者会見には、山川証券の現会長、現社長、広報室長、顧問弁護士が出席した。この模様は各テレビ局全国ネットで放送した。記者会見は前もって周到に準備された式次第に沿って淡々と進行した。

    自主廃業決定の経緯(社長)
    役員会、簿外債務、『飛ばし』の実態(社長)
    経営陣の法的責任、(広報室長)
    簿外債務存在の確認、山川証券の社員の問題(会長)
    簿外債務と含み損の解釈、簿外債務の詳細(顧問弁護士)
    系列銀行との関係、系列会社の問題(会長)
    会社更生法が申請できなかった背景(顧問弁護士)
    質疑応答

以上の順序で会見は約二時間に及んだのであった。質疑応答では記者から厳しい質問が浴びせられた。
緊急記者会見の生中継が終わるとテレビは再度スタジオに戻り経済学者などのゲスト・コメンテーターを交えて今回の問題を考えるという代わり映えのしない内容の物になった。

月曜日は朝から山川証券のニュースでもちきりだった。隣の席の西野力が話かけてきた。
「とうとう本当になっちゃったな」
「市場は山川の倒産を予測していたけど、いざそうなってみると大変なことだよな」
「早速、マイヤーから山川証券の取引先事業会社のリストを作成するようにってご命令だよ」
「山川の顧客は今後外資系を含めた金融機関の草刈り場になるんだろうね」
「山川が国内主幹事証券であったという理由だけで株が売られている会社もあるからな。客にとっては踏んだり蹴ったりだよな」力のその言葉に慎介ははっと何かに思いあたった。
「大亜精鋼の株価はどうなっている?」
力がすばやくPCのキーボードをたたいて大亜精鋼の株価を呼び出す。
「午前9時10分現在、5円安の172円で取引きされてるね」
株価はそれほど大きくは動いてなかった。一時、大亜精鋼の株価も100円を割れる勢いで急降下したがその後200円台前半まで回復し、150円から200円の間を一進一退でさ迷っていた。
慎介と力は互いに背を向け合ったまま各自の椅子に腰を下ろしていた。
「どこが山川の後釜として幹事証券会社に就くかによって、各社株価にも大きな開きがでてくるんだろうな」
「まあ、財務基盤のしっかりした証券会社への鞍替えってことになるだろうね」
「そうなると業界最大手の大野証券の一人勝ちってことか・・・」
「まあ、そうなるだろう。ただ、大野も山川の客を全て引き取る訳にはいかないだろうから、先ず、山川の客で美味しいところを最初に摘まんでいくだろう。それで、大野の食べ残しを2番手・3番手のハイエナたちが貪るのさ。まさに弱肉強食の世界さ」
力がコンピューターの画面から視線を慎介の方へ向けて訊ねた。
「慎介、それで大亜精鋼の主幹事証券を大野証券が引き継ぐ公算は?」
「いまのところ何とも言えないな。大亜精鋼の大澤社長はなかなかのやり手だから、いろいろと裏で工作していると思うけど」
「思うけど、何?」力が先を急いた。
「大亜精鋼の今の業績だと大野にとって何か美味しい商売の種にはならないんじゃないかな」
「例の2億スイス・フランのワラント債の償還は来年だよな」
「ああ」
「銀行はもうこれ以上融資しないだろう?」
「出来ないだろうね。」
「それじゃ、何か打つ手はあるの?」
「いや、全くのお手上げだよ。エクイティ・キャピタル・マーケット部の市田は大澤社長とは懇意らしく、何とかすると息巻いているようだけど、現在のボロボロの株価じゃ何も出来ないし、出来たとしてもそれは新株を大安売りする自殺行為だな」慎介は自分自身に再確認するように状況を力に話した。
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