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警察を出て、ホセは由右子をホテルまで送ると申しでた。愛車のBMWで街路を疾走した。走り出すと正面から吹き付ける風が心地良かった。運転席のホセに向かって由右子が言った。
「ホセさん、この度はいろいろと有り難うございました」
風に所々言葉が遮られてホセは良く聞き取れなかった。
「なんですか」ホセは声を張り上げた。
「有り難うございます」由右子も声を大きくして言った。
「とんでもない。あまりお役に立てなくて・・・」
信号待ちで車が止まった。途端に熱さと湿気が体に纏わりついてきた。
「これからどうされますか」ホセが訊いた。
「出来れば午後の便で東京に戻るつもりです」
「そうですか、僕もジュリーも一度ぐらい夕食でもしたかったのですが」ホセが残念そうな顔で言った。
「すみません。でも、この件がはっきりしたらまた来ます。その時は是非」
信号が青に変わった。ホセは愛車のアクセルを踏み込んだ。20分ほどでホセの車はパシフック・グランド・ホテルの車寄せに着いた。
「空港までお送りしたいのですが、客とのランチが入っていましてね」ホセは腕時計を見た。午前11時30分だった。
「これ以上ホセさんのお仕事の時間を割いて頂く事は出来ません。昨日も今日も本当に有り難うございました。それから警察のリカルドさんから何か連絡があった時には、私にも教えて下さい。E・メールで結構ですから」
「了解しました。飯野さん、それじゃお気をつけて」ホセは白い歯を光らせて口元に爽やかな笑みを浮かべた。由右子が会釈をすると、片手を軽く上げて別れの挨拶をしながらホセは愛車を発進させてホテルの車寄せから表通りに出て行った。
 
由右子はホテルの部屋に戻ると急いで日本航空の予約課に電話を入れ、当日の742便東京行きの空席を調べて貰った。エコノミー・クラスは満席で、ビジネス・クラスが2席残っていた。由右子はその1席を予約した。電話を切って受話器を戻した時、電話のメッセージ・ランプが点灯しているのに気がついた。由右子はダイヤル0を押してオペレーターと話した。メッセージは朝岡慎介からで、由右子の事を心配して電話をしてきたのであった。由右子はマニラに着いてから慎介に一度も連絡していなかった。バックから黒のスケジュール帳を取り出すと、慎介の会社の電話番号を確かめて、国際電話を入れた。数回の呼出音の後、ヴォイス・メールが応答し始めた。由右子は仕方なく手短に今までの経緯を留守電に残した。受話器を置くと急に疲れを感じた。時計は正午まで10分程残していた。エアコンの無いマニラ警察での作業で体は滲み出た汗でべとついていたので由右子はチェック・アウトの前にシャワーを浴びることにした。バス・ルームにはバスとは別にシャワー専用のブースがあった。シャワーブースに入ると蛇口をひねった。ほとばしる熱いシャワーが頭から由右子をすっぽりと包みこんだ。適度なお湯の熱さが疲れた体に心地良かった。シャワーを浴びながら由右子はマニラで調べた事をいろいろと頭の中で整理してみた。シャワーを終えてバスローブを羽織ると、部屋に戻って冷蔵庫からペリエの瓶を取り出すと備え付けの栓抜きで開けてグラスに中身を注いだ。シュワシュワと言う清涼感のある音が響いた。グラスを持って由右子は部屋のカウチに腰を下ろした。熱った体にペリエの炭酸が染み込んで行くのを感じた。窓の外にみるマニラの街は今日も灼熱の太陽にじりじりと照りつけられ、塵と埃にまみれて息苦しそうだった。しばらく休息した後で、由右子は手際良く荷物をまとめるとベル・ボーイを呼んだ。5分程でベル・ボーイが荷物を取りにやって来た。右子はチップを渡すと、小ぶりのトート・バッグを肩にかけて部屋を後にした。1階のレセプションでチェック・アウトを済ませると、先ほどのベル・ボーイが荷物を持って正面玄関まで由右子を案内した。ドア・マンに空港までと告げると、彼は手を上げて客待ちのラインで待機していたタクシーを呼んだ。先頭の1台が正面玄関に静々とやってきて停車した。ベル・ボーイが荷物をトランクに入れるのを確認して、由右子はタクシーに乗りこんだ。タクシーは街の雑踏を掻き分けながら約1時間かかって空港に到着した。午後3時をまわった頃には由右子は機上の人となっていた。
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