IPO最新情報や西堀編集長のIPOレポート、FXストラテジストによる連載コラム、コモディティウィークリーレポートなど、今話題の様々な金融商品をタイムリーにご紹介するほか、資産運用フェア、IRセミナーのご案内など情報満載でお届けしています。
|
|
|
|
3月もあと10日程度となりこの四半期末の株価の着地が気になるところです。今月は概ねマーケットは強いトーンで、今週ダウは2008年9月26日以来約1年半ぶりの高値をつけるなど、10,500ドル以上を維持して堅調に推移しています。
さてご存知のとおり、今週火曜日午前、オバマ米大統領が医療保険改革法案に署名し同法は成立しました。今後10年間で3,000万人以上の医療保険の無保険者を解消させるため、この国では初めての試みとして、いわゆる国民皆保険制度が導入されることが決まりました。
署名式典では、オバマ大統領は、その「歴史的成果」を強調しました。
今まで、何人もの大統領がこの制度の導入の必要性を理解しながらも、その試みを諦めたり頓挫したりしてきた大きな難問であり、これを最優先に取り組んできたオバマ大統領にとっては、確かに大きな勝利と言えるでしょう。
しかし、日曜日深夜の議決は、ギリギリのまさに薄氷を踏むような勝利でした。承認に必要な数は216票で、これを僅かに上回る219票での法案通過でした。
人口の約1割の約3,000万人が医療保険をかけておらず、毎年全米でおよそ42,000人が満足な治療を受けられずに亡くなっている、これをなんとかしなければならない、というのが民主党の根本的主張でした。(横道にそれますが、米国の人口の約3分の1の日本の自殺者が12年連続で毎年3万人以上になっているという事実は、これと比較しても深刻な問題だと思います。)
しかし、この制度の導入には、当然、大きな費用も伴います。この法案作成の過程で、議会予算局は今後10年間にかかる費用を約85兆円(9,400億ドル)と見積もり、富裕層に対する社会保障税の引き上げや高額医療保険への課税などで財源を確保することが目論まれています。
私は、この土日共、コマーシャルなしの国会中継専門チャンネルにかじりつき、同法案審議の様子を見ました。土曜日は6時間、日曜日は12時間と、じっくりと民主党、共和党両党の主張を聞きましたが、共和党はこういった費用の問題や、この制度運用のためにさらに連邦政府の組織や人員が肥大化することを問題視し、憲法論議を交え新制度に強い反論を主張していました。
医療保険改革法の成立を大統領に強く働きかけたのは誰でしょうか?
その一つは、労働組合でした。特に、オバマ大統領の強い支持基盤の一つとであるSEIU(サービス業従業員組合、組合員数約220万人)は、特別対策室をワシントンに設け、この法案に関するオバマ政権の政策ブレーン的な役割を果たしたと言われています。このような動きもあって共和党の議員から「まるで旧ソ連の社会主義時代のようになった」との批判を受けていますが、不況が長引く中、社会分配を求める労働組合は無視できない影響力を持ち始めているようです。
今までの大統領がなし得なかったことを実現したことは事実ですが、膨れ上がる一方の財政赤字が医療保険改革法の導入によってさらに悪化に拍車をかけ、この制度も破綻してしまう虞がないのか、11月の選挙に向けて、国を2分するような議論が続くものと思われます。
筆者ブログ「アメリカは今」 http://ameblo.jp/god-bless-market/
|
米国駐在インベストメントバンカー Mayflower
|
|
|