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米国事情NOW〜金融、経済、そして政治。米国は今〜
2010年11月24日(水)
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サンクスギビングホリデーが目前となって一気に冬めいてきましたが、株式市場も冷え込んできました。QE2の歓迎ムードとGM再上場の熱気は早くも消え去り、NYダウは11,000をかろうじて維持する水準まで下落しました。

アイルランド救済策をめぐる欧州の債務問題、回復の兆しがない米国経済問題に、北朝鮮の挑発行動が加わり、まさに爆弾ばかりの状況です。また、運用担当者のほとんどは既にボーナスを確定済で当面リスクをとる必要がなく売り局面になると一方的になりやすい状況に陥っています。

前回「欧州からのブラックスワン」と題して心配事を書きましたが、不安は高まるばかりです。

米国の金融危機を振り返れば、サブプライム問題が明らかになった後、ベアスターンズの蹉跌を経て、半年後に本格的な危機に発展しました。今回の欧州危機の流れでは、ギリシャ危機をいわばベアスターンズと例えれば、これを乗り越えた後に起こったアイルランド問題は、一気に、欧州の債務危機に発展する可能性があります。

米国の金融危機の根本は、サブプライム住宅ローンに代表される、経済の「ハイ・レバレッジ」構造にありました。欧州問題の根幹は、「共通通貨を通して本来はそれぞれがユニークな個別経済だったユーロ諸国を束ねられる」という一種の幻想、これが夢破れたことでしょう。

サブプライムという劣位のイメージとは全く反対に、アイルランドは「ケルトの虎」と言われ、過去20年間輝かしい発展を遂げ、優等生と称されてきました。真面目な国民性、経済を開放し伸ばすための革新的な政府の政策、アイルランドの発展の初期の頃に少し関わった私としては、その目覚しい発展にとても驚きました。

そのアイルランドが大きな危機に瀕している根本的問題はユーロというシステムにあり、ユーロ圏の問題として、今後ドミノ的に、スペイン、ポルトガル、そしてイタリアなどに伝播していく可能性が高いと思われます。(先日発表された英国王室のウイリアム王子の婚約祝い景気で、欧州危機が雲散霧消してしまう、などということになれば最も幸いですが。)

さて、ユーロ圏の破綻続発がアメリカ経済にどんな影響を与えるのかが大きな関心事です。

まず心配されるのは、米国の金融機関がどの程度欧州向けの貸し出しを行っており、どの程度貸し倒れるのかという、バランスシート毀損の問題です。デレバレッジで新規優良資産の積上げができない米国の金融機関が欧州の債務問題の処理を迫られた場合、米国内での貸し出し余力が大きく減少することが懸念されます。

今日発表されたFRB公開市場委員会議事録でも、冴えない成長率と、高止まったままの失業率に悲観的な見方が示され、この失業のどれほどが構造的要因なのか熱い議論がなされたことが明らかになりました。今後、いわゆるQE2が、デフレ懸念を解消し、景気刺激効果を与えることを期待するためには、金融機関の資金循環機能が害われないことが重要です。

欧州危機が米国の金融機関にどの程度影響を与えるのか、問題の行方から目が離せません。


筆者ブログ「アメリカは今」 http://ameblo.jp/god-bless-market/
米国駐在インベストメントバンカー Mayflower


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