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エジプトを火種に北アフリカでは政権への不満に火がつきデモ騒ぎとなり次々と燃え広がっていますが、時を同じくして米国ではウィスコンシン州の州議会周辺で数千人規模のデモ騒動が勃発、公立学校の教員は授業放棄行動に出て学校が事実上閉鎖状態に陥っています。オハイオ州でもデモ行進が続発しており、物騒な各州の雰囲気は、さながら北アフリカのようです。
このような不穏な事態になったきっかけ、それは、景気低迷に伴う税収の悪化からウィスコンシン州の財政赤字が膨らむ一方となっているため、同州知事が赤字削減対応策として、州の職員組合に対し集団交渉権(コレクティブ・バーゲニング)を制限するという方針を決定したことです。共和党系知事によるこの法案が、デモ騒動の発火点になりました。
ウィスコンシン州の財政改革法案が成立すると、警察や消防以外の州政府労働組合員は、医療保険や年金などに関する集団交渉権を失うだけでなく、年金負担率や、医療保険料払い込み率は、現行から大きく増えることになるなど、懐はとても厳しくなります。
州知事としては、法案を成立させて年間支出を3000万ドル軽減、翌年度以降にもさらに大きな削減効果を見込み、財政悪化に歯止めをかけるという目論見です。また、州政府職員全員が身を切ることで、特定職員の解雇を避けることもできるとアピールしています。
この背景には政府関連の公務員のための福利厚生費用が一般企業よりもコスト高でもはや堪えられない、という現実があります。公務員の福利厚生費用の上昇率は一般企業社員を約20ポイント(ウオールストリート紙報道)も上回るという状況で、州の財政悪化に拍車をかけています。
オバマ大統領の支持母体としてSEIU(サービス業労働組合連合)の存在があることは、今までも書きましたが、SEIUはブログ、ツイッター、ビデオストリームをフル活用して、「労働者の息を止めるな」という反論を張り、反対行動を支援し団結を訴えるキャンペーンを繰り広げています。 オバマ大統領も「労働者への攻撃だ」として、共和党系知事が主導している財政改革策への反対姿勢を明らかにしました。
オバマ大統領の台頭には「チェンジ」を旗印にミドルクラスに焦点を当てた政策が大きな原動力になっていました。しかし、その波及効果が遅く雇用改善が進まないという状況が続くや、昨年の中間選挙では共和党が大勝利して、民意は大きく反転しました。「ミドルクラスか、富裕者層重視か」、年末の減税政策では共和党が主張してきた富裕者向けのいわゆるブッシュ減税の延長をも飲み込むことを決断したオバマ大統領の政治的配慮は、民主党支持者の失意と不満を高め、デモ参加者の行動の過激化に繋がっているともいえます。
低成長下、連邦や州の財政悪化問題は容易に解決できるものではありません。労働組合員だけでなく、自営業者を含めて国民の多くが安心な生活を確保できずに悩み苦しんでいます。米国社会の「階級闘争的対立」の構図が強まっている現実は、デモ騒ぎで明らかになりました。
北アフリカ情勢と米国のデモ騒動はもちろん本質的に異なるものですが、米国各地のデモの不穏な雰囲気は、国民の生活感と乖離して上昇してきた株式市場にとって目先の大きな不安要素であることは間違いありません。各州のデモの行く末は注意して見守る必要がありそうです。
筆者ブログ「アメリカは今」 http://ameblo.jp/god-bless-market/
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米国駐在インベストメントバンカー Mayflower
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