IPO最新情報や西堀編集長のIPOレポート、FXストラテジストによる連載コラム、コモディティウィークリーレポートなど、今話題の様々な金融商品をタイムリーにご紹介するほか、資産運用フェア、IRセミナーのご案内など情報満載でお届けしています。
|
|
|
|
今週の米国市場は大荒れ模様で始まりました。
月曜日、米格付機関、スタンダード・アンド・プアーズ(S&P)が、米国の国債長期信用格付けを、今までの「安定的」という見通しを引き下げ「ネガティブ」とすることを発表しました。このような見通しの変更は、将来的に格付けが引き下げられるという可能性が高いものと、市場の投資家は受け止めています。
S&Pは、米国政府の膨大な財政赤字状況にも関わらず、米政府の対応が混迷を深めていることを今回の見通し引き下げの理由としました。今まで最も信用が高い安全資産として世界の中央銀行や機関投資家などから選好されてきただけに、その信用見通しが引き下げられたことで、早速、市場には大きな動揺が走りました。月曜のNY市場では、株式、債券、ドルが同時に売り一方となり、リスク回避の動きから金相場には買いが集中するという様相となりました。しかし、火曜日時点では、この混乱も収まりNYダウは65.16ドル反発して取引を終えています。
前回も書きましたが、オバマ大統領は、今後12年間で約330兆円(4兆ドル)もの赤字を削減するという財政健全化策を発表しました。しかし、昨年10月の年度開始から約6ヶ月も費やし政府関係の業務が停止寸前という事態になってようやく2011年度予算が通過したという与野党対立の構図に格付け機関は警告を発した、という見方もできるでしょう。
アメリカ、イギリス、フランス、ドイツ、そしてカナダ。「AAA」の格付けを保っている先進5ヶ国のうち、国内総生産(GDP)に対する財政赤字の比率が最高水準にあり、なお膨らみ続けている米国の状況に対する市場の懸念は、今後益々強まっていくものと思われます。
このように、米国の財政不安問題が世界的不安材料となっている中、本当に、米国国債はデフォルト(債務不履行)となる可能性が高いとみるべきなのでしょうか。
今回の格付け見通しが「ネガティブ」に引き下げられたということが、ギリシャのような事態になるのが近いと示唆しているわけではありません。格付けそのものは依然「AAA」で、マクロ的にも、米国経済はゆるやかな改善を遂げています。「米国は大きすぎてつぶれない」とばかりにあぐらをかくようなことをせず、議会で与野党ともに財政赤字削減への取り組みを進め始めたという方向性は、明らかな前進です。
米国では、大きな問題が発生した時にはその解決に大きなエネルギーが注ぎ込まれます。
「自由を巡る(イングランドとの)戦争の砦で、勇敢にはためいていた星条旗」、この一節は米国国歌に力強く歌われています。メジャーリーグの野球の試合前にも斉唱される米国国歌は、星条旗に敬意を示して唱和する人々の間に団結心とエネルギーをかきたてます。
困難を極めた独立戦争で戦い抜いた勇気と誇りが謳いこまれている国歌を子どものころから愛している米人は、国家的危機を前にすると解決に向けた強い行動能力を発揮すると思います。きっと財政問題にも力強く立ち向かうはずだ、という私の期待、これは米人に対する贔屓が少し過ぎるでしょうか。
筆者ブログ「アメリカは今」 http://ameblo.jp/god-bless-market/
|
米国駐在インベストメントバンカー Mayflower
|
|
|