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米国事情NOW〜金融、経済、そして政治。米国は今〜
2011年4月27日(水)
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先週は、米国市場が大荒れ模様で始まったと書きましたが、その後は早くも反発、NYダウは2年11ヶ月ぶりの高値をつけています。4月の消費者景気信頼感指数が2ヶ月ぶりに上昇したのを受けて、景気回復期待が高まったことが背景にあるようですが、ここまで高値圏になると、乱高下するのも無理はなく、当面小さな材料に一喜一憂する動きが続きそうです。

さて、前回は、格付機関のスタンダード・アンド・プアーズ(S&P)が、米国の国債長期信用格付けを、「ネガティブ」という見通しに引き下げしたことに触れました。また、これに関して、米国人気質としては、独立戦争で戦い抜いた勇気と誇りを持って前向きに対処していくに違いないだろうと、ややアメリカ贔屓のコメントを書きました。

そんなことを考えていて目にとまったニュースがあります。

日本文学研究で有名なコロンビア大学のドナルド・キーン名誉教授が、日本国籍を取得して日本に永住することになったという記事です。今日のコロンビア大学での最終講義では、能の歴史やその奥深さについて、約1時間半のレクチャーが行われたようです。

ドナルド・キーン博士は、近松門左衛門、松尾芭蕉、三島由紀夫など、幅広い日本文化の紹介に大きな役割を果たしたことが認められ2008年に文化勲章を授章しています。今回、大震災が発生したタイミングで日本に定住するという知らせは、ある意味ありがたい驚きでした。

数年前、ニューヨークのメトロポリタンオペラでDVDを買うレジの列で、私の前がキーン博士でした。様々な文化や芸術の深みの中で日本文化の理解を極められている博士の日常がオペラ鑑賞にあるという現実に接し、小さな感銘を覚えました。今日、最後の授業のテーマに取り上げられたのは「能」。キーン博士は「能は、オペラなどの西洋の舞台芸術とは違って、登場人物はそれぞれの名前ではなく役柄で認識されている」「シテ、ワキ、ツレ、ツレの延長の子役、など、役柄が意味を持つ」などと、解説を繰り広げられたはずです。

大震災の後約1ヶ月、こちらの雑誌や新聞では、震災の混乱の中でも日本社会が平静を保っていることに驚き、賞賛する記事が多くみられました。また、その後も、節電や行事の自粛など、強制や規制とは無関係に、自粛の動きが浸透する日本社会。米国の日本人社会の間でも、各地で、千羽鶴の折鶴募金など、自然発生的な予定調和の動きが静かに広がっています。

「誰かが叫び、誰かが導く」のではなく、「それぞれが自ら考え個々の役割で日常に為すべきことが社会調和的に行われる」。そのように静かで自発的な日本人の動きが今、際立っているように思えます。日々の生活や日常のシーンで粛々と社会性を保つ、いわゆる日本人としての「ケ」の世界は、何かと非日常的な「ハレ」の世界を思わせる米人とは全く異なるものです。

大震災と余震の恐怖が早く消え、日本人の日常が復興に向けた前向きな動きに静かに調和する時、米人が予想している以上の力が発揮されることでしょう。大震災が発生したにもかかわらず日本移住を決意したキーン博士は、そんな日本人の静かな力を信じているに違いありません。

「少しでも(日本人に)勇気を与えられればうれしい」と語ったキーン博士、日本移住は今夏とのことです。


筆者ブログ「アメリカは今」 http://ameblo.jp/god-bless-market/
米国駐在インベストメントバンカー Mayflower


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