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5月に入って米国や世界景気の減速懸念から原油価格などが急落しました。債券相場は上昇(金利は下落)し、ゴールデンウイーク前とは異なった様相となっています。株式市場も一進一退しながら弱含んでいますが、NYダウで1万2000ドル台のこの水準は、年初よりは大きく踏み上げている水準で、買い場と見ている市場参加者も多いかもしれません。
さて、先週は出張続きだったためコラムをお休みさせて頂きましたが、その間、IPOが市場を賑わせています。
5月18日には、専門分野毎のソーシャルネットワーキングサービスを提供するリンクトインがIPOを果たして今日現在で7100億円もの時価総額になっています。純利益倍率で1300倍と言うこの持てはやされぶりは驚異的です。リンクトインのホームページによると約1億人もの会員を有しているとの自称で、会員一人当たり7,100円の価値がついているということになります。
また、今日はロシアの検索エンジン最大手として6割以上のシェアを握っているヤンデックスが、米国ナスダック証券取引所に上場しました。公開価格(25ドル)を40%も上回る35ドルの初値をつけリンクトインに続きネット銘柄への期待の高さが示され、総額約1,070億円が調達となって、2004年のグーグル以来最大の規模の株式公開になったと報じられています。
現時点でのIPO公表企業数は191社(ブルーンバーグ調べ)と、前年同期の約110%となって相当の熱気です。年初にもある程度IPOへの期待は高まっていましたが、これほどまでの盛り上がりは、やはり実際おもしろい公開銘柄が積み重ってきたことによるものなのでしょう。
米国の実際の景況感は全く優れずともすれば実体経済の悪さに失速しがちな株式市場が、IPOの前向きなセンチメントに支えられて腰折れしていないと言う側面は無視できないと思われます。また、これからの米国ナスダック証券取引所上場予定企業を見ても、インターネット関連企業だけではなく、セミコンダクター、航空会社、携帯の基地局機器や、エネルギー関連など、多種多彩な業種の会社のIPOが控えており、とても楽しみです。
金融危機直後の落ち込みを見てきた者としては、このようにIPOが活発化する状況まで回復してきた米国市場の回復力には圧倒させられます。震災などの影響がある直近は別にしても、日本の株式市場の現状と比較すると愕然とするばかりです。このようなことでは、日本でベンチャー企業が育つ素地はなくなっていくのではないかと、とても心配になります。
市場原理主義の是非は、社会論的には簡単に議論できるものではないと思いますが、金融危機以降の日米の回復力を客観的に見た時、膨大な流動性の供給だけではなく、市場のメカニズムをうまく利用して、経済システムの自律的な自己回復力を導き出した米国の包括的な政策が奏功したことは否めない現実だと思います。
「市場メカニズムの活用」と言うだけで嫌悪感を抱かれがちな日本の発想を、少しでも「市場との上手なつきあい方を考える」方向に持って行きたいものです。IPOもままならず日本のすばらしいアイデアや技術が花咲く道も閉ざされてしまっている現状を早く打開し、日本の産業力の再活性化への道筋をつけることが急務となっているのではないでしょうか。
筆者ブログ「アメリカは今」 http://ameblo.jp/god-bless-market/
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米国駐在インベストメントバンカー Mayflower
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