IPO最新情報や西堀編集長のIPOレポート、FXストラテジストによる連載コラム、コモディティウィークリーレポートなど、今話題の様々な金融商品をタイムリーにご紹介するほか、資産運用フェア、IRセミナーのご案内など情報満載でお届けしています。
|
|
|
|
労働省が先日発表した5月の米国の雇用統計は、失業率が9.1%と、2ヶ月連続で悪化しました。この発表を受けて、株式相場は一気に弱含みとなり、一時NYダウは12,000ドルを割り込むかという、2ヶ月半ぶりの安値水準まで下げています。
また、景気動向をはかる指標の一つである非農業部門就業者数は、前月比5万4000人増(季節調整済)と増加幅が前月を大きく下回り、これも、景気回復が息切れしている状況を示すものとなりました。内容的には、小売業界がマイナスとなり、サービス業界も8万人増に留まったほか、政府部門は2万9000人減って、景気は低調なことが示されました。
オバマ大統領は、この発表後、「日本の大震災の影響を受けたため」などと、矛先を日本に向けて原因を国外に転嫁するコメントを発表、これには正直、呆れました。実際、自動車メーカーなどで日本の部品が届かないという影響があったことは確かですが、市場にショックを与えた市場予想(15万人)との大きな差は、大震災の影響だけでは説明できません。上記のとおり、政府部門の就業者数も大きく減少しており(一方、民間部門は15ヶ月連続増加)、むしろ雇用を増やすための諸政策が尽きてきたことが主因だと思われます。
このとおり、米国の景気回復は「息切れ」していることが明らかになってきました。
オバマ大統領の上記のような発言は、あくまで一時的なものであることを印象付けようとしたものと思われますが、いわば足踏み状況が明らかになった景気回復軌道は、単なる一時的なものなのか、それとも根本的に潜在成長率が低下しているのか、判断は難しいところです。
しかし、2ヶ月連続して上昇した失業率を見た時、1,390万人にも上る失業者、623万人もの求職活動をあきらめた人、そして、約855万人がパート労働で凌いでいるという状況、これは、人々の生活としては相当厳しい現実で、消費が盛り上がらないのも当然でしょう。
このような厳しい見方を踏まえて、金融株や建設株等は敬遠され、大きく値を下げました。
これからどうなるのか。以前も書きましたが、米国では大きな経済問題などに直面した時には、重要問題を直視して必要な政策を確実に打ち出すという「レジリアンス(対処力)」が非常に高く、行政や官僚組織がその機動性を発揮するというのが真骨頂でもあります。
ましてやオバマ大統領は、経済の浮沈に自らの再選がかかっています。したがって、景気回復の息切れ状況を脱する打ち手は、早晩、間違いなく実行されるはずです。包括的流動性供給政策、いわゆる「QE3」が出動するかどうかは別にして、状況打開のためのカンフル剤は必要です。もちろん、財政難や激しい与野党対立など、米国の政治的状況はとても困難な環境にありますが米国の高い現実対応能力で、どんな施策が打ち出されるのか期待されるところです。
政治家は迷走し、軽んじられた官僚は力を出さず、金融当局は鈍感な小出しの政策でお茶を濁すだけ、というお決まりの情けない構図の日本。ましてや失笑もののお粗末な管降ろしの顛末は、米国では全くニュースバリューが認められていません。このような、日本の情けない状況を見た時、「この難局にしっかりとするべきなのに」と、ため息しか出ないのは私だけでしょうか。
筆者ブログ「アメリカは今」 http://ameblo.jp/god-bless-market/
|
米国駐在インベストメントバンカー Mayflower
|
|
|