IPO最新情報や西堀編集長のIPOレポート、FXストラテジストによる連載コラム、コモディティウィークリーレポートなど、今話題の様々な金融商品をタイムリーにご紹介するほか、資産運用フェア、IRセミナーのご案内など情報満載でお届けしています。
|
|
|
|
今日発表されたコンファレンス・ボードの消費者景気信頼感指数(6月)は58.5と、前月から悪化し2010年11月以来の低い水準となりました。景気の現状認識を「良い」とした回答は14.3%と横ばいだったものの「悪い」という回答は37.2%から38%に上昇、雇用についての認識も、「求人が多い」との回答が5.7%から5.2%に減少する一方で、「就職が難しい」との回答が43.5%から43.8%に増えました。景気の先行き不透明感と併せ、今後も消費は振るわないだろうとの見方が強まったものの、景気後退懸念への慣れからか株式市場は反発、NYダウは145.13ドル高い12,118.69ドルとなりました。
さて、このように12,000ドル近辺(NYダウ)にある米国株式市場を支えているのは、企業買収(M&A)の動きです。6月末を控え、この半年の米国の企業買収の動きを見てみました。
BloombergのM&Aデータによると、この半年の米国ドル建ての企業買収取引は約5,220件、取引総額では、約$540 Billionドル(43兆円)にものぼっています。この取引で、買い手のトップは、プラーベート・エクイティ・ファンド(PEファンド)で、およそ10%、すなわち約4兆円の企業買収取引を行っています。
日本のM&Aデータを見てみると、この半年で企業買収取引件数は約650件、取引総額で約3兆円にとどまっています。このうち、約2兆円は、新聞の一面を飾った武田薬品工業によるナイコメッドの買収と野村ホールディングスによる野村土地建物の完全子会社化の2件で、日本の企業買収取引では、PEファンドによる大きな案件はありませんでした。
欧米では、市場の活性化や企業経営の新陳代謝に、M&A取引は大きな貢献をしています。なかでも、PEファンドの役割は大きく、英国のM&A取引でもこの半年間でおよそ8,000億円(84件)の取引を行って、買い手の筆頭となっています。
日本では、企業買収に絡む投資「ファンド」といえば、村上ファンドのような未熟で劣悪な投資事件の影響で、強い悪印象が残っています。また、「ハゲタカ」という表現に代表されるように「食われてしまう」というイメージも相当あるといえるでしょう。
しかし、米国では、PEファンドの実像は全くそれらとは異なり、企業グループ再編、事業承継、そして事業再生などの局面で、企業生命やその進化を支えるため、懐が深く経営ノウハウも高い「資本家」としての役割を大きく発揮しています。また、PEファンドは、業界の合従連衡を促すリーダーとなる場合や、経営力のないオーナー経営者に替わってマネジメントの近代化やガバナンスの強化を進めるというカタリスト的な役目を発揮することもあります。
日本では、「株主資本主義」や「ファンド資本主義」というと、非常に強いアレルギー感があると思われます。しかし、こちらでは、社員グループがファンドを担ぎ出して経営者から会社を買い取る(イソップ:エンプロイー・シェア・オプション・プラン)場合さえあります。
日本では、いわゆる「株式持合い資本主義」が長く続き、資本の流動化、市場の活性化を阻んできました。今後数回、米国におけるPEファンドの役割を見つめ、日本におけるPEファンドの役割のあり方、それによる日本企業の経営活性化の可能性を見ていきたいと思います。
筆者ブログ「アメリカは今」 http://ameblo.jp/god-bless-market/
|
米国駐在インベストメントバンカー Mayflower
|
|
|