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最近の米国市場が様々な不安要因を抱えながらも、12,000ドル近辺(NYダウ)を維持しているのは、企業買収(M&A)の動きが活発なことが大きく、日本とは異なる大きな要因となっています。また、この半年の米国での企業買収取引総額約$540 Billionドル(43兆円)のうち、買い手のトップはプライベート・エクイティ・ファンド(PEファンド)で、およそ10%、すなわち約4兆円の企業買収取引を行っていることは前回書きました。(文中、Bloombergデータ引用)
日本では、いわゆる「株式持合」という特殊な資本主義形態が長く続き、資本の流動化、市場の活性化が進みませんでした。今後数回、米国におけるPEファンドの役割の理解を通して、日本企業の経営活性化の可能性を見ていきたいと思います。
約4兆円の企業買収取引を行ったプライベート・エクイティ・ファンド(PEファンド)による取引は、約500件です。そのうち、最も多くの買収に関わったファンドは、テキサス・パシフィック・グループというファンドで、12件で約2,800億円もの買い取引を行っています。
このファンドの最大の取引は本日発表された「イムコアー」の買収案件(友好的買収)です。イムコアーは、血液診断装置メーカーで、買収金額は1,300億円にものぼります。買収条件が決まるまで時間がかかり今後さらに価格は上がって、最終的には1,600億円程度の買収になるだろうという憶測記事もあります。この条件は、買収プレミアム36%、キャッシュフロー(EBITDAといい、政府、銀行、株主など重要な外部ステークホルダーに支払う前のキャッシュフローのこと)倍率では約11倍の買収価格となっており、いわば、向こう11年分のキャッシュフローを払ってでも欲しい会社という条件になっています。
輸血前に血液の成分分析を判別する装置を開発、販売しているこのメーカーは、この分野では50%以上ものシェアを持っており、ファンドは買収によって、さらなる技術力と販売力をつけさせ、いわゆる競争優位性を圧倒的なものしていこうという目論見だと思われます。
ここで、ファンドの役割のひとつが見えてきます。
それは、「企業競争力強化のパイロット役」というものです。企業競争力は、技術力、社員の営業力、そしてブランドなどから成り立つものですが、その強化のためには、技術開発や販路開拓の資金力も必要です。また、外部の競合環境も常に変化しているため、常に競争優位性を保つため、経営陣は、株主の理解を得て抜本的投資決断を行うことが必要となる局面もあります。
医療分野は、今後も世界的に伸びることが予想されており、その中で競争優位性を強化しながら成長していくための資金とマネジメントをファンドがリードして行く、それが今回の投資戦略でしょう。買収資金は銀行も融資し、いわゆる「レバレッジド・バイアウト」(LBO)というファイナンスが組まれるため、全ての資金をファンドが出すわけではありませんが、総額1,600億円もの買収に失敗は許されません。ファンドも真剣に経営していくでしょう。
「競争力強化政策は経済産業省頼み」、日本では、戦後長くそんな発想がありました。翻って欧米では「リスクマネーで企業の競争力を強くしていく」、そんな仕組みが定着しており、ここに日本にはない、ファンドの大きな役割の一つを見ることができるのではないでしょうか。
筆者ブログ「アメリカは今」 http://ameblo.jp/god-bless-market/
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米国駐在インベストメントバンカー Mayflower
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