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米国事情NOW〜金融、経済、そして政治。米国は今〜
2011年7月13日(水)
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またかといわんばかりにヨーロッパ問題が市場を動揺させています。ギリシャ、イタリアそしてスペインと、欧州の国債がジャンク化するなか、米国も財政コントロールというテーマを巡り与野党で激しく意見が対立して不安定な状況です。このような中、為替は1ドル80円を割り込みましたが、株式市場は12,500ドル近辺(NYダウ)を維持し意外にしっかりと推移しています。

このような地合は、企業買収(M&A)の動きが活発なことが大きく日本とは大きく異なる背景の一つだと、ここ数回書きました。この半年の米国での企業買収取引のうち、買い手のトップはプラーベート・エクイティ・ファンド(PEファンド)でおよそ10%、約4兆円の企業買収取引を占めていますが(Bloombergデータ)、昨日は、さらにおもしろいニュースが流れました。

車通勤が多いアメリカの朝食、それは、渋滞に巻き込まれながら運転席でほおばるドーナツです。コーヒーをセットにドーナツで朝のカロリーを取るというのは、定番のスタイルです。

昨日、ドーナツ店とアイスクリームショップのフランチャイズを展開するダンキンドーナツが、新規株式公開(IPO)で最大、約370億円を調達することが判明しました。現状、新規公開株式を買いたい投資家も多く、できれば、追加売り出しをしたいとの意向も報じられています。

ダンキンドーナツは、プラーベート・エクイティ・ファンド(PEファンド)3社、ベイン・キャピタルとカーライル・グループ、そして、トーマス・リーによって2006年に買収され株式を非公開化しており、今回のIPOは再上場です。当初の買収時の借入資金が約1,400億円は残っていると見られており、今回の調達資金はこの返済に充当される予定です。

世界57ヶ国で16,000店もの店舗を運営している同社は、ファンドによる買収後、メニューをアップルパイや朝サンドなどドーナツ以外のアイテムを充実させ、コーヒー豆をスーパーでも拡販するなど、商品力の拡充を進めてきました。

ここでのファンドの役割、それは、「経営改革と活性化の指南役」です。

どのような会社でも、商品にはライフサイクルがあり、特に消費者の嗜好はめまぐるしく変化します。この会社も、2006年当時には、ドーナツ、アイスクリームの他に、主にカリフォルニアで展開しているサンドイッチ、「Togo’s」の店舗網を持っていました。この「Togo’s」を他のファンドに売却して、経営資源を「ダンキンドーナツ」と「バスキンロビンアイスクリーム」に集中させました。また、2008年には中国(上海)にフランチャイズを拡大、2006年には12,000店しかなかった店舗網を上記のとおり16,000へと、大きく拡大することに成功しています。

このような戦略の転換によって再上場が可能となったわけです。

この戦略転換はファンド株主がリードし、この間、経営陣も入れ替えられました。経営方針の転換はリスクを伴いますが、マーケティング戦術を緻密に計画して実行しその成功率を高めることは可能です。変化しやすい消費者の嗜好、常に油断は許されませんが、ダンキンドーナツはファンドによる「経営活性化」の好例と言って良いでしょう。再上場はIPOの活性化にも寄与しており、ファンド資本主義がもたらす市場への好循環にはやはり無視できないものがあります。


筆者ブログ「アメリカは今」 http://ameblo.jp/god-bless-market/
米国駐在インベストメントバンカー Mayflower


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