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このコラムが101回目となった今週とんでもないマーケット状況となりました。米国債の格下げニュースを受けて投資家のリスク回避行動が加速化して、昨日月曜日、米国の株式市場はNYダウで634.8ドル下げ10,809.8ドルと大暴落、パニックとなりました。
一方、格下げされた米国債も暴落してドル金利は急上昇するかと思いきや、反対に、米国債価格は急上昇、30年長期国債利回りは3.65%と、相当低い水準です。意外な市場の反応でしたが、米国景気の停滞感を前提にすれば、金利急騰は避けたいところで今のところ無難な着地です。為替は、基本的に円の比較選好の動きは止められず円高傾向は続くと見ていましたが、これはそのとおりでした。
さて、前回も振り返りましたが、このコラムを始めたつい2年半前は、当時の株価はNYダウで6,800ドル近辺と底を這い、欧米では大型倒産が相次ぎ、ハイレバレッジが崩壊した恐怖感はピークでした。今回は、リーマンのような金融機関の破綻が危惧される状況ではなく、レバレッジの高さも少しずつ解消され、当時のような恐怖感はありません。
しかし、今回、世界的に明らかになってきたこと、それは、「もう、これ以上、政府による財政出動には頼れない」という限界感が共有されるようになってきたということです。
失業率は高止まりして雇用状況が改善されない中、人々の不安や不満は相当高まっており、しかも政府がこれ以上財政出動できないとなれば、閉塞感が高まるのは当然です。また、今後の世界の見通しを占う上で、1万人もの警官を追加投入せねばならない状況となったロンドンなど英国各地での暴動騒ぎは、ニューヨーク市場の暴落以上に気がかりなことです。
今日米連邦準備制度理事会(FOMC)が発表した声明では2013年半ばまで政策金利を低め誘導するという程度で量的緩和政策第3弾の出動はなかったにもかかわらず株式市場は大きく反転しNYダウは429.92ドルも戻しました。このように市場には自律的に戻る力はありますが、痛み荒んだ人の心はなかなか戻りません。また、欧米諸国の政府も、これ以上、緊急の資金供給が継続できない状況にある中、今後世界はどのような対応していけば良いのでしょうか?
世界的に事態打開のための打ち手が限られているというこの限界感、3年前の金融危機の時の「恐怖感」とは異なり、これはいわば「鬱(うつ)」とでもいうべき閉塞感ある状況です。
では、この状況にどう対応すれば良いのでしょうか?
こんな時、複雑に考えずわかりやすく人に考えて、例えばうつ病の治療方法を適応すれば良いのではないでしょうか。例えば、うつ病を治す場合には、普通、三つの精神療法があります。
まず一つ目(認知療法)。
精神的閉塞感が続くと「何をやってもだめだ」と悪い方向に考えてしまいます。経済学的にも景気悪化過程では世間の閉塞感は自己実現的にさらに悪化に拍車をかけるといわれています。精神療法では閉塞感を解消し考え方を変える治療を行います。先進諸国も財政は悪くても格付けに恐れることなく減税策を打つなどの打開策が必要かもしれません。
二つ目の療法(行動療法)。
うつ病では、生活習慣を正して計画的生活に改善する療法が施されます。先進諸国も財政規律を正し、政策の重要順位付けをして限られた財源を適切に配分し、財政改善をめざしていくことが大切だと考えます。
三つ目の対応(関係療法)
うつ病治療では、人間関係の問題点を整理しコミュニケーション改善が図られます。これと同じように、先進国と新興国との間の資金循環の偏頗を解消し、恣意的な為替レベルにある中国の通貨政策に対する抜本的な姿勢転換が必要なのではないでしょうか。
どんな病気も、早期治療が肝心です。
うつ病状況にある先進諸国の治療を正しく実施しなければ、さらに病状が悪化することが心配されます。この対応を誤れば先にも書いたとおり、マーケットの混乱が景気後退感を高めその閉塞感がさらに景気を後退させるという、不安心理の自己実現加速という悪循環に陥りかねません。
日本のデフレスパイラルの過程でもこのような心理的悪循環が作用していたことは日本人としては誰もが知るところです。英エコノミスト誌はドイツもアメリカもこの日本的悪循環に陥っていると揶揄した表紙を掲げて直近号を発行しましたが、そのような状況に嵌らないよう、対策(治療)の実行が必要な時だと言えるでしょう。
筆者ブログ「アメリカは今」 http://ameblo.jp/god-bless-market/
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米国駐在インベストメントバンカー Mayflower
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