東京IPO

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★ LINE(3938・東証)今期注目 大型IPO ★

6/10(金) LINE(3938・東証)の上場承認が下りました。
日本と米国上場のグローバルオファリング(国内外同時募集)となり、
日本では7/15(金)上場予定、米国現地時間では7/14(木)上場予定となっています。

主幹事は野村證券。当初、仮条件は6/27(月)を予定していましたが、6/28(火)に
決まりました。英国のEU離脱によるマーケットの影響等を勘案したものと想像されますが、目論見書ベースでの当初想定発行価格は2,800円に対して、2,700〜3,200円の幅で仮条件は決定されています。ブック・ビルディング期間は、6/28(火)〜7/8(金)。価格決定日は7/11(月)を予定しています。

東証1部または2部を予定しており、指定部は公募価格決定後に決定されるとのこと。
なお、国内での募集株式数は13,000,000株、海外募集株式数は22,000,000株を予定。
日本では募集予定株式数の37.1%、海外で62.9%の募集を予定されています。
国内外の募集における最終的な内訳の株数は、需要状況を勘案のうえ、公募価格決定日の7/11(月)に決定される予定です。

・事業概要と沿革
LINE株式会社は、オンライン・ゲームのサービスを提供することを目的に、ハンゲームジャパン株式会社として、2000年9月に日本で設立されました。同社は、2003年8月に社名をNHN Japan株式会社に変更し、2013年4月にLINE(株)に変更しています。
LINE(株)は、韓国に所在するNAVER Corporation(旧社名 NHN Corporation) の子会社
です。現在、LINE(株)及び子会社は主にLINEビジネス・ポータル事業を展開しており、世界230以上の国と地域で利用されている無料通話・無料メールアプリ「LINE」を筆頭に、キュレーションプラットフォーム「NAVERまとめ」、総合ニュースサイト「live door ニュース」、国内最大級のブログサービス「live door blog」などを展開しています。

2015年3月にMicrosoft Mobile OyからMixRadio事業を譲受け、ラジオ型音楽配信サービス「MixRadio」の提供を行っていましたが、昨今の事業維持コストの上昇及び市場状況など事業環境の変化に伴い、今後の成長は困難と判断し、2016年2月に事業撤退を決定しています。

2011年6月に日本でモバイルメッセンジャー・アプリケーションとしてサービスを開始して以来、アジアを中心として世界230以上の国と地域でユーザーを有し、グローバルなプラットフォームへと成長し、アクティブユーザー基盤は成長を続けています。2016年3月31日時点で、月間アクティブユーザー数(以下MAU: Monthly Active User)は218百万人に達し、そのうち152百万人が当社ユーザー数の上位4カ国(日本、台湾、タイ及びインドネシア)のユーザーとのことです。


LINE_MAU


図表1):世界・日本・アジア各国での月間アクティブユーザー数推移
出所:同社有価証券報告書
同社は、様々な文化やユーザーのニーズを考慮したローカライズに努めており、
19の言語でサービスを提供しています。現在の事業セグメントは、「LINEビジネス・ポータル事業」の単一セグメントであり、「LINEスタンプ」、ゲーム関連の「LINE GAME」、「LINEPLAY」、LINE広告である、「LINE公式アカウント」、「LINEスポンサードスタンプ」、「LINEポイント」等、ポータル広告の「NAVERまとめ」、「live door」等による収益から成り立っています。


LINE_composition


図表2):サービス別売上構成比
出所:同社有価証券報告書

・2015/12期連結実績
2015/12期連結(IFRS:国際会計基準)に基づく売上収益は120,669,837千円(前年同期比39.7%増)。具体的には、LINE GAMEやLINEスタンプの課金売上及び広告売上が大きく伸び、売上収益に貢献。LINEビジネス・ポータル事業においては、LINE GAMEでのアプリのダウンロード数が5億1千件に達し、2014年1月にリリースした「LINEディズニー ツムツム」等人気キャラクターを起用したカジュアルゲーム、2014年3月にリリースした自社タイトル「LINEレンジャー」の課金が好調に推移した模様。LINEスタンプは、2014年5月より販売を開始したクリエイターズスタンプが売上を牽引し順調に推移しているようです。クリエイターズスタンプのクリエイター数は31万人を超え(2015年12月末現在)、スタンプのラインナップが充実し、順調に販売額が伸びているとのことです。LINE公式アカウント、LINEスポンサードスタンプやLINEポイント等のBtoBサービスについても、広告効果の高さが好評を得て、受注件数が順調に推移しているとのことです。
海外での事業展開は、現地でのメッセンジャー・アプリの市場環境等を考慮し、「LINE」の普及を推し進めています。また、ユーザー規模が拡大した台湾、タイ等でのLINE GAMEのプロモーション実施、LINEスタンプの販売、LINE公式アカウント、LINEスポンサードスタンプ、LINEフリーコイン(現LINEポイント)の営業強化等の施策が功を奏し、海外における売上収益も順調に伸びているようです。

営業利益面では、「LINEスタンプ」、「LINE GAME」等の売上収益の増加に伴い、スマートフォンデバイス上での課金による決済手数料やIP保有者に対するロイヤルティが増加したほか、事業規模拡大に伴う従業員数の増加及び株式報酬費用により人件費が増加。またMixRadio事業において、サービス展開に伴う開発コストや人件費を計上し、現在の事業環境等を踏まえたのれんや無形資産等の評価により4,613,344千円の減損損失等を認識した結果、営業費用は130,668,382千円(前年同期比62.8%増)となり、営業損失は9,524,182千円(前連結会計年度の営業利益は6,415,298千円)となっています。

・調達資金使途
国内募集における差引手取概算額34,422百万円については、海外募集における手取概算額58,368百万円と併せて、短期借入金及び社債の返済資金に42,262百万円、設備投資資金に12,149百万円、運転資金に25,000百万円、LINE Mobileを運営するLMN株式会社及びLINE MUSIC株式会社への投融資資金に2,660百万円。残額は、同社グループの投資ファンドを通じた投融資資金やLINEビジネス・ポータル事業における成長戦略投資資金に充当する予定とのことです。

・設備投資等
具体的には、サービスの拡充やアクセス数の増加等に対応すべく、2016年12月期に4,653百万円、2017年12月期に3,496百万円、2018年12月期に4,000百万円を設備投資資金として充当する予定とのこと。また、当社グループの事業拡大に伴い借入れた、金融機関からの短期借入金の返済資金として2016年12月期に42,000百万円、社債の返済資金として2016年12月期に262百万円を充当するようです。
運転資金については、国内外の事業拡大を図るべく、広告宣伝費として2016年12月期に7,000百万円、2017年12月期に9,000百万円、2018年12月期に9,000百万円を充当する予定であり、LMN(株)及びLINE MUSIC(株)への投融資資金については、それぞれの事業運転資金に充当するため、2016年12月期にLMN(株)の投融資資金として2,000百万円、LINE MUSIC(株)への投融資資金として660百万円を充当する予定とのことです。

残額は、同社グループのLINE GAME Global Gateway投資事業有限責任組合、LINE Life Global Gateway投資事業有限責任組合、LINE C&I Corporationを通じた国内外のゲームコンテンツ開発会社やO2O、イー・コマース、エンターテイメントサービスへの投資資金、または同社グループの事業基盤の拡充を目的とした国内外での成長戦略投資資金に充当する予定とのこと。同社は成長戦略投資として、国内外のゲームコンテンツ会社やIT関連企業への投資を行った経験があり、今後も成長戦略の一環としてグローバルにM&Aや投資を行う予定とのことです。

・ロックアップ期間
ロックアップは上場日以降180日間の2017年1月10日(当日を含む。)までの期間となっています。

・グローバルでの他社比較
Facebook、Twitter、WeChatとLINEを米国、アジアでのMAU数を比較したところ、
LINEのMAU数の伸びが他と比較して少ないことがわかります。
よって、今回のIPOを機にアジアを軸に世界展開を進めることには必至であると想像できます。しばらくは事業拡大のための継続的な先行投資が続くことを踏まえたうえで、今期の通期業績予想を勘案し、将来的な成長に期待したいところです。
冷静な判断としては、直近の業績を見たところ、成長のための積極的な投資、人件費と開発コスト、広告宣伝費の掛け方はそれなりの大きな額であり、短期的な利益成長よりもしばらく長い目で投資したほうがよいのではないかと個人的には考えます。
しかし、一見単価の安いLINEスタンプやゲームがローカライズされ、全世界のユーザーに購入されるだけでも、売上額は大きく、数年前から言われていたIPOが実現するとなるだけでも注目度は高く、再びIPOマーケットの起爆剤となるでしょうか。

LINE_bloomberg

図表3):他社との比較MAU数
出所:Bloombergデータ

 

2016.6.28 東京IPO編集部 堀口智子